1.《ネタバレ》 製作者のインタビューによると本作のテーマは「多様性」らしい。であれば、本作で描いていることは「多様性の全否定」だろう。
のび太は逆上がりができずに仲間外れにされると感じている。そして、キューが仲間と思っていた動物から何の前触れもなく攻撃を受けたのをのび太は見て、「空を飛べないから」キューが仲間外れにされたと感じる(なぜかそう思ったかは分からんが)。そして、自分の姿に重ね合わせたのび太はキューに空を飛べるように強要する。ここからは完全なるスパルタ教育である。
本作には逆上がりができないことも、空を飛べないこともダメなこととして描かれ、それを受け入れるキャラクターは誰一人として登場しない。もし多様性について描きたいなら、のび太が逆上がりができないことも、キューが空を飛べないことも周囲が受け入れるべきだろう。結局、「他の子ができるんだからあなたもできるようになりなさい」という話になっている。体が小さいとか運動が苦手という理由で悩む子供は世の中にたくさんいるだろう。そういった子供たちに「他の子ができているのに君はなぜできないの?気合と根性さえあればできるでしょ。あと、練習は1人で頑張りなさい」と言っている作品になってしまっている。
のび太の友達は何人もいるのに、なぜ誰一人としてのび太に逆上がりのコツを教えたり練習に付き合ったりするという描写すら入れないのか。ここ最近のドラえもん映画って「友情」を前面に押し出していたと思うが、なぜここにこれほど無頓着になれるのか。そして、最後にのび太が逆上がりに成功して映画は終わる。本作を見ている子供で逆上がりができなくて悩む子供は「のび太ができたのに、僕(私)はできない。このままでは周囲に認めてもらえないかもしれない」と思ってしまうぞ。多様性なんて何一つ考えていない製作者のただの根性論。2020年という時代に作られたのが信じられない愚作。