16.《ネタバレ》 007最高傑作。
今回の「カジノ・ロワイヤル」は原作小説第1作目!
本作こそ紛れもない「最初の007」であり、娯楽スパイアクションになる前のハード・ボイルドタッチの渇いた作風が特徴だ。
本当に「ゴールデンアイ」の監督か?本作は完全にそれを超えた。
オープニングは歌詞の入ったカッコつけで嫌いなのだが、それ以外は完璧と言っていい。
何より動きだけで状況を読み取らせる戦闘が堪らない。
暗殺から始まるファーストシーン、たった一人の爆弾魔を全力で殺りに行く壮絶な追走劇、大使館なんざクソ喰らえ!爆破だ!!
セバスチャン・フォーカンとダニエル・クレイグの「障害物競走」が凄すぎる。パルクール習いてえー。
負けず嫌いで張り合うクレイグの顔。
いい加減スパイしろよ(褒めてる)
多分シリーズで一番スパイしないスパイなんじゃねえかコイツ?
女性関係はあくまで情報のためと割り切る姿勢、常に生傷が絶えない荒々しさが気に入った。
スパイしないスパイは戦ってなんぼ。
特に「お約束」を最後まで廃した展開が良かった!
今までの007は「どうせ死なねんだろ(舌打ち)」を楽しむのが恒例だったけど、今回のボンドはマジで死ぬんじゃないかとヒヤヒヤしまくった。
毒盛られた時の焦りまくるボンド。
「過去に大使館を吹っ飛ばしたスパイは亡命でもしたわよ」
堂々とボスの家で帰りを待つボンド。
捕まってもぶん取った“軍資金”のために殺されない。
どんな拷問を受けても屈しないボンドの頼もしさ。
奴の股間はチタンか?
二重、三重の駆け引きが明かされていく終盤も中々だが、やはりあの結末は悲しすぎる。
これほど言葉を介さずにメッセージが響いてくるボンドは久しぶりだ。
本作はあくまで「ボンドの過去」だが、ボンドが変わる度に全く別の映画として楽しんでいる俺にとっては「現在進行形」の後味なのだ。
最初と最後の出来事で見せるボンドの表情がより虚しさを漂わせる・・・この表情の変化。
本当今作のボンドは女運が無い・・・恐ろしく人間臭い。そこが良い。
ラストで「標的」を地に這いつくばらせて真の“007”となった姿が印象深い。
後味は悪いけど、完成度は文句なしの傑作。