1.《ネタバレ》 ◆園子温の映画には人間の成長、すなわちアイデンティティの確立に焦点を当てている映画が多い。世間を気にせず素直に生きることが良いことである、という価値観はとても良いと思う。本作はその過激さに目を奪われがちだが、主人公の女性が立ちんぼの人と出会い、さまざまな「淫らな」経験を通してアイデンティティを確立させるというものだと僕は解釈します。そして、今回の主人公は女性である。僕は、女性の成長は出産によって劇的に促進されると考えている。◆そう考えると、非常にすごいと思うシーンがある。それは最後の廃墟でお婆さんが仕切り、男性が手を持ち、女性が相手の首を絞めるシーンである。あの場面が主人公にとっての出産であり、成長なのではなかろうか(「生」と「死」が逆転しているところが皮肉っぽくてまた良い。)。そして、園監督の持ち味でもある、『紀子』の血まみれで食卓を囲むシーンでも感じた、狂気と日常が混ざり合ったなんとも不思議な場面でもあり素直に感服した。◆最後の廃墟を目の前に刑事が発した一言は、刑事もまた児島に対する依存から脱却し成長したことの表れであると思う。◆やっぱり、園監督にはヴァーホーベンの『ショーガール』を観たときに感じた正直さを感じます。自分の奥さんだからといって一切容赦せずおしっこさせたり、男にフルボッコにさせたりするところにも誠実さを感じます。