2.《ネタバレ》 家族のドラマと、政治ドラマ、戦争が起こる背景描写、それぞれが互いに繋がる事なく、断絶した状態で描かれてゆきますが、その断絶こそが恐ろしさ、無情さを明確にしています。平凡で平和な家庭が、ある時点でぷっつりと消えてしまう事の、その悲惨さが胸を打ちます。キューバ危機が起こるのは、この映画が製作された1年後。歴史的な事実を言えば、米ソが全面戦争に突入したとしても、日本が、そして世界が滅びるところまでは到底行かない程度の当時の核兵器の量ではあったようです。しかし、この映画のようになってしまうという危機感はみんな抱いていたのですね。被爆国として、まだ広島・長崎から16年しか経過していなかった訳ですから、それがもたらす恐怖と悲劇はこの国に色濃く染み付いていたことでしょう。今はソ連が崩壊し、内戦やテロを中心とした局地での戦いの世界、全面核戦争の恐怖からは程遠い状態になっているように思えます。だけど、この映画が製作された当時と違って今は、本当に、世界を簡単に滅ぼしてしまえる程の核兵器が、現実に、あるのですね。この映画の前半で描かれる、ちょっとした過ちから危機を招くエピソード、それは、ただ持っている、ただ存在しているというだけでも生じる恐ろしさを示唆しています。だけど、この国はそろそろ被爆の恐ろしさを忘れ始めたようですね・・・。