1.《ネタバレ》 どうしようもない人生。夫を妹に寝取られて、たった一人で人生の建て直しをはかる女と、かつての仲間の未亡人に召使としてアゴで使われる男。惨めさを絵に描いたような二人の人生が、カジノ・シティとして再生を図るアトランティック・シティで交錯する。ハートウォーミングに逃げず、ありきたりの幸運話にとどまらない、ルイ・マルならではの感性に彩られた醜く、悲しい男と女の欲望の物語。絵空事めいた救いはない。悲惨な人生が、これを境にほんの少し上向いて行くかもしれない期待感だけを残して、最後まで人生の賭けに勝とうとする人々の姿に人はほんの少しだけ安堵する。彼女は賭けに勝ったのか?彼女の勝ちは、失った物を本当に全て補うことができたのか?小銭を掴んで肩を寄せあう老人たちは、満ち足りた心でこの世を去ることができるのか?ルイ・マルの見たアメリカが、この一作に凝縮されている。「生きろ」というプリミティブなメッセージを、さりげなくしかしドラマティックに、見事に描き上げた名編である。 ルイ・マルは「プリティ・ベビー」に続いてスーザン・サランドンと仕事してますね。そういえばジャンヌ・モローの面影があると言えないこともない。