2.よく主人公の演技は絶賛されますし、たしかに凄いのですが、若い頃のお春は明らかに声が老けていて無理があると正直思いませんか?。田中絹代の容姿が好きでもないし、前半では「萌え」?というものを感じません(後半妙にカワイイ)。白黒で引きのショットが多いから成立した映画ではないか?とすら思います。しかし、本作を最後まで観ればそんなことはやっぱり些細なこととしか思えません。まあ、とにかく美しいです。/
この作品の世界では女性は人間扱いされません。受動的に生きることを強制され、まさに子供を生む機械として、あるいは男性の性欲処理の道具として利用されます。自由な恋愛は罪であり、女性が異性を求めることは「好色」とされます。そして男はというと・・・ひたすら醜い。なにやらフェミニズム批評っぽくなってきましたが、本作が表現するのはフェミニズムとは何か違う気がします。(むしろフェミニズム的には批判されたりして?)。本作は叙情的な女性の悲劇ではなく、背後にあるのは憐憫の視線とも単純な社会に対する怒りとも少し違います。人間らしく生きるとは?。幸せな人生とは?。そう問いかけながら、監督は真摯で冷徹な現代からの視点で主人公の人生を描きます。ミゾグチは、かくもこの世は生きにくいのか・・・と観客を打ちのめし、それでも生きていく主人公の存在そのものを希望として我々に示しているのではないでしょうか?。あの映像美は、それでも(だからこそ)この世界は美しい、という肯定に見えます。