1.この映画には物語しかない。誰がナニしてこうなった、という物事の顛末を描くのみであって、誰がこう思ってこうしました、という「こう思った」を巧妙に避ける。画面手前に人をなめたロングショットその客観描写、様々なことがあちこちで起こっているのをただ長回しで捉えること、「兄は一目で姫と想いを交わした」身も蓋もないナレーション。何が起こるのか、何が眼前に広がっていくのか、物語の原初の快楽をとりもどすこと。それにはまった私は小坊主の唐突な翻意に泣いた、黒い雪に泣いた、ラストショットで泣いた。あまりの酷評が信じられぬ傑作。無茶苦茶面白いじゃん。