171.《ネタバレ》 私の世代のルパンはピンクジャケットでしょうか。でも全然観てなくて、夕方の再放送の赤ジャケが一番馴染みがありました。
夏休みとかの午前中に放送されていた、もっと古いルパンが緑ジャケですね。チャーリー・コーセイの歌が格好良く(子供には可笑しかったけど)、インパクトが有りましたね。
ルパンのTVアニメは当初、ハードボイルドな怪盗&殺し屋という大人向けの作風でしたが、あまりの低視聴率から監督が自主降板。テコ入れで参加させられたのが宮崎監督。大人向けに完成しているルパンというキャラを、視聴率のために子供向けに軌道修正して創り変えられたそうです。健闘及ばず、緑ジャケのルパンは23話で番組打ち切りという結末を迎えました。
再放送で人気が出たルパン。本作公開当時、テレビでは赤ジャケのルパンが放送されていました。赤ジャケのルパンは155話もの長寿番組となり、以降映画やTVスペシャルでは、赤ジャケがルパンの代名詞となっています。
では何故、カリオストロでは緑ジャケに逆戻りしてたのか?宮崎監督はおそらく、自分が育てた(産んだわけではない)不遇な緑ジャケ・ルパンの、最後の大冒険・引退の物語として、本作を創ったんじゃないでしょうか?そうであれば、本作の優しいルパンが、モンキー・パンチ氏の創ったアダルトなルパンとも、コミカルな赤ジャケとも違うことが観えてきます。
最初のカジノでルパン一味は「ざっと50億」もの大金を手に入れます。モナコだから円ではなくフランかな?'79年あたりは1フラン=50円~60円。これはもう一生遊んで暮らせるお金です。泥棒稼業の“退職金”としては充分な金額だったハズ。
だけどルパンは偽札だからって捨ててしまいます。自分たちの“退職金”が偽札だったなんて恰好悪いコトが出来なかったんでしょう。
「次元、次の仕事は決まったぜ!!」カリオストロ公国のゴート札。ここを攻略したって偽札しか手に入らないはず。尻尾を巻いて逃げ出した、駆け出しのチンピラ時代の精算なのか。思い残しを無くすことが、今のルパンが考える“仕事”なのかもしれません。そう考えると、たまたま出会った少女を悪い奴から助ける事も、今のルパンには立派な“仕事”なんでしょう。
派手なベンツから安い大衆車フィアットに乗り換え、100円ライターを使ってシケモクを吸い、カップうどんを食べる。そして何より不二子を“追わなくなった”ルパン。不二子とは実に1年ぶりの再会。
豪勢なもの、精巧な偽札、不二子との縮まることのない男女の関係さえ、今のルパンには宝物では無くなっていたのかもしれません。
カリオストロのダム湖の秘密を暴き、無垢なお姫様と一緒に暮らす未来も掴めたのに、彼女を抱きしめることなく立ち去るルパン。
「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」ルパン三世の長い歴史の中で、クラリスの心ほど価値のあるものがあっただろうか?
「おめえ、残っててもいいんだぜ?」返事をしないルパンが、不二子の収穫、偽札の原盤を見て元気を振り絞る。そして追いかけっこはいつまでも続く…
宮崎監督が育てた緑ジャケットのルパン三世は、宮崎監督の考える最も価値のあるものを盗んだからこそ、このカリオストロの城が最終回なんです。