1.《ネタバレ》 原作・NHKドラマ共に深い感銘を受け、今作も非常に楽しみにしていただけに、怒り心頭です。長編小説の映画化とは、限られた時間の中で原作のエッセンスを残しつつ、監督の満ち溢れた感性にて映像化していく~ゆえに、あらすじの割愛やキャスティングの変更も問題はないと考えます~それがプロの技ですから。
しかし今作は、原作の根幹であった「命の軽重」「人と人との絆」がほとんど描かれておりません。ジャンボ機墜落直後のスピード感・新聞社内の局の壁と人間関係の細かな描写が、前半部を支え、観客は引き込まれますが、核心の後半部は事故原因とオーナー社長との確執に終始し、エンドロール「事故原因はいまだ究明されていない」とは・・・この映画は何を訴えたかったのか~観客は呆然としたまま席を立ちます。
原作からのキャスティングの変更は可と述べましたが、悠木記者のトラウマとなった望月の死とその従妹の女子大生とのやり取りを割愛した事は致命傷。「大惨事で亡くなられた方の命と人知れず交通事故で亡くなった人間の命の重さに違いがあるのか?」ジャーナリズムの根幹であるこの話を女子大生は悠木にたたきつけます。その後の彼の行動が原作では感動を呼ぶのですが・・・悠木親子の確執・安西家との描き方も中途半端。要するに表面上の現象のみ捉え、「ひとの想い」が深く描かれいません。
最近の邦画のレベルの高さは素晴らしいと思っていましたが、至高の原作を踏みにじるようなレベルの低い映画人がまだこの邦画界に存在しているのは嘆かわしいことです。彼らが意味のないラストシーンの為にオーストラリアロケを敢行し、仲間内でのみ楽しんでいる姿が目に浮かびます。