10.《ネタバレ》 震災で日本中が右往左往している今だからこそとつい見てしまった。
見るんじゃなかった。わたしが悪うございました。
あれだけの大震災のさなかに原発崩壊による放射能汚染の描写が一切ないことはもうおいといて、
映画の命である「人間描写」が一切できていない。
日常に非日常が割り込んでくる、信じまいとしても現実だと誰の胸にも暗い未来が沁みこんでくる、
あの時間経過とともに盛り上がる不安感と焦燥が、国民の気持ちが全然描かれていない。
むやみに物資に群がったりフェンスにしがみついてガチャガチャやったり悲鳴を上げて走り回ったり。
どこでもここでも使い古された表現ばかり寄せ集めて、今ここでパニック映画を作ろうとするクリエイターの気概と誇りはいったいどこじゃい。
さらに致命的なのは登場人物の魅力のなさ。
いったい主人公はだれなのか、誰に感情移入してみればいいのかさっぱりわからない影の薄さ、人物描写の薄っぺらさ。
カップルと呼びたくもないレベルのお二人の付いた離れたの、始まりから発展から別れまでもう類型的で、こう来ると思ったらそう来た、な演出の連続に、映画作りを放棄してSFXを取りたかっただけかとみてるこっちも投げやりになってくる。
しかも日本中が火山爆発と反沈没状態でボロボロになっても、着物姿でツバメの帰巣に微笑む主役の母の住む福島県だけがどういうわけか絵に描いたようにきれいで無事なラスト。
いろいろととにかくご都合がよすぎます。
かてて加えてこの映画が53億ほど稼いだと聞いて、観客を含めた日本映画のレベルの低さに気分もずっぽりと沈没しました。