3.《ネタバレ》 『野獣捜査線』『刑事ニコ/法の死角』等アクション俳優との仕事が多かったアンドリュー・デイビスが、渋い大人のキャストを得て作り上げたサスペンスアクション。後の傑作『逃亡者』へと繋がる要素が多く、彼の演出スタイルを確立する上での重要作であったことは伺えるのですが、映画の出来自体は大したものではありません。。。
米ソの歴史的和解を拒む軍産複合体による大規模テロを背景とし、殺人の濡れ衣を着せられた主人公の逃走劇と謎解きという、たいそう面白そうなお話であるにも関わらず、これがイマイチ盛り上がりに欠けます。主人公の行動は自分の身を守るためなのか、それとも軍人としての大義のためなのかが明確に描写されないため、感情移入が難しいのです。主人公を演じるのはジーン・ハックマンですが、オスカー受賞で名優と持て囃されたのも今は昔、本作製作時は低迷期にあり、『追いつめられて』や『カナディアン・エクスプレス』等、同傾向の映画に出演しまくっていました。本作もそんな雇われ仕事のひとつに過ぎず、肩に力の入らない演技で映画のテンションを下げまくっています。軍縮会議場警備に失敗しても、護送中の囚人に逃げられても、自身に殺人容疑がかけられても顔色ひとつ変えず、常に余裕の表情。その貫禄には素晴らしいものがありますが、巻き込まれ型サスペンスでこの安定感は不要でしょ。他方、当時無名に近かったトミー・リーは、少ない出演時間ながらなかなかの存在感を披露しています。おしゃべりで気の良さそうな男から一転して、口数の少ない殺し屋の本性を現すという演技の振れ幅も素晴らしく、後の大スターの片鱗を見せつけています。