1.《ネタバレ》 居心地の悪い映画。大自然がモチーフになっているのに中身は不自然のオンパレードっていう。その不自然な「感動作ですよ」って作りに、なんかいたたまれなくなってしまう感じ。
全編に漂う古臭いセンスは、それはそれでいいというか、この作品のあり方なのでしょう。問題は風景以外の何もかもが作り物めいていてどうにも冷めてしまう点。
映像とセリフと音楽とでこれでもかと説明しまくってきます。登場人物全員が説明のためのセリフと演技を繰り出してくる状態で、特に本来セリフにすべきでない、それこそ映像で語るべき心情、心象がクサいセリフとなってどんどんこぼれ出してくるのが本当にいたたまれないです。
更に、映像に明らかに不要なものと足りていないものがあって、それがおかしな印象を与えています。
安藤サクラが意味ありげに旦那の仕事姿を見つめるシーンは必要ありませんし(旦那が真剣に仕事に打ち込んでいます、という表現であるならば、彼女の曖昧な表情は物語に不要な不安を与えてしまいます)、逆に蒼井優の作る「おいしいご飯」や「母が大事にしていた写真」、更に「小屋の近くで見つけた絶景」はその画が必要なんじゃないかと思います。映画なのだからセリフだけでなく映像でおいしさを見せて欲しいですし、写真や絶景は流れからして当然見えるモノだと思っているとスカされちゃうんですよね。松ケンやトヨエツが眺めてる姿でなくて、カメラが更にその二人の前に出て実際に二人が見ている風景が欲しいんですけど。
映像には見るべきところもあります。雄大な景色はもちろん、通夜のシーンで部屋を埋め尽くしていた人々がさーっとはけて主要人物のみが残るカットなど、さっと静へ転じる巧さが際立ちます。
でも、表情を強調するための寄りや、アクセントとなるスローの多用はそれってどうなんだろう?果たして必要だろうか?って感じてしまって。
善き人々ばかりの物語ならば感動は容易に紡げるハズ、という感じで作られているように思えるのですが、なにか全てが現実からちょっと浮いているように見えて、印象としては「面映ゆい」とか「気恥ずかしい」とか「きまりの悪い」とかいう表現が浮かんできてしまうような映画なのでした。