1.《ネタバレ》 やはり、なんか色々と腑に落ちないなあという作品。比較的行動原理のハッキリしている女3人(太宰に傑作を書かせたい本妻、太宰の芸術の一部になりたい愛人一号、太宰と死にたい愛人二号)についてさえも、端的にその場面でどういう心情でそうしているのかが伝わらない場面がかなり多い(殊によく分からんのが宮沢りえの本妻)。それよりも何よりも太宰本人について、何故にそこまで破滅的に堕落しているのかすらサッパリ分からない上に、創作意欲を含めて何かに対する情熱・思いというものも更々感じられず、唯々しょーも無い駄目男にしか見えない(傑作を書きたいとも思ってなさそうだし、本気で死にたいとも思ってなさそうだし、女を本当に愛しているという風にも見えない)。
それでいて個々の演技は総じて妙にテンションが高いのが多いので、更にピンと来ない上に上滑り感も強く、鑑賞中ずっと頭に「?」が浮かびっぱなしだった。ただし、気合の入った俳優陣の演技はあくまで表面上はそれなりに上質で、映画のテンションを保つのには辛うじて成功している(脇役の男共(特に藤原竜也)の演技は中々良かった)。
美術・映像の点では今作は大分大人しいように思うが、それでもハッとするような質の高いショットも散見され、ここは流石の蜷川実花と言うべきクオリティが健在。やはり問題は、主役の太宰の人間の掘り下げが非常に甘い・いい加減なことに尽きるように思う(土台、実話が題材なのにこれが真相だとは全く思えない時点で、どこか違う星の話にならざるを得ない)。蜷川実花の映画としては、これでも実は一番中身があるようにも思うが、所詮またこれも「上っ面だけの」映画だと言える。観たいのは「何故太宰が『人間失格』を書けたのか」「書けたのに何故死んだのか」の真相なのだ。
『ヘルタースケルター』では脱いでたエリカ様は今回は鉄壁で、二階堂ふみだけが乳首出してるという点も不釣り合い。役柄的にも絶対NGな片手落ちだと思う。