1.田舎でうつうつと暮らす青年が、一百姓として国家に尽くそうと決意する、という文部省製作の映画。ただ面白いのは、どうも彼をそうさせたのは“意地”なのであって、都会での学生生活への憧れや、倶楽部で見得を切ってしまったことなどが脳裏をめぐって決断に至るの。国への純粋な滅私奉公観からではないんだよ、ということをちゃんと描写している。そこらへんで少しリアリティを加味していたのかも知れないが、ラストになるとみんな単純な人間になって丸く終わる、ってのがこの時代の作劇法でした。なんとなく溝口らしさを感じたのは、娘が都会に出てしまったのを追ってきた老母の鉄道付近の場、でしょうか。