14.《ネタバレ》 こういったストーリー展開の場合、観客はどうしても「無実の黒人青年」に肩入れしてしまう訳で、それを逆手に取った巧みな脚本だったと思います。
けれど、本作に関しては伏線が足りなかった印象も受けましたね。
終盤にて「実は本当に少女を殺していた」と明かすのであれば、もっと納得出来る材料を予め提示しておいて欲しかったです。
ローレンス・フィッシュバーン演じる警官に関しても、事前に「嫌な奴」として描き過ぎていた為なのか、終盤に共闘してくれても盛り上がるものを感じなくて、非常に残念。
思うに、前半にて登場人物の善悪に関するミスリードを徹底的に行っていた弊害なのではないでしょうか。
作中で最も悲劇的な事件であろう「少女の殺害」の動機が弱過ぎるのも気になります。
主人公の妻に対する復讐が目的だったなら、こんなに遠回りしなくても、もっとスマートな方法があったのでは? という疑念が拭えなくて、全ては「観客の意表を突く為のどんでん返し」ありきの後付けに思えてしまいました。
冒頭にて、如何にも同情を誘う存在であった「孫の無実を信じて、主人公に真相解明を依頼する老母」が、終盤は丸っきり姿を見せなかった事も不満。
主人公達が助かってハッピーエンドな空気で終わりたかった気持ちも分かりますが、物語を盛り上げる為に彼女を登場させた以上は「本当に孫が悪人だったと知って、嘆き悲しむ老母」という姿も、しっかり描いておくべきなんじゃないかな、と思った次第です。
上述のように、観賞後は色々と気になる点が多かったりもしたのですが、観ている間は素直に楽しめましたね。
この映画、ズルいよなぁ……と思いつつ、作り手の力量を認めさせられる。
そんな一品でした。