1.《ネタバレ》 下世話な欲望の連鎖に、CIAの機密情報が絡んだらどうなるか?
コーエン兄弟くらいしか思いつかないだろう題材を、どこまでも馬鹿馬鹿しく描いた映画だった。
シュールでブラックなユーモアセンスは、相変わらずのコーエン節で愉快だった。
ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、フランシス・マクドーマンド、ジョン・マルコビッチ、ティルダ・スウィントン、とアカデミー賞クラスの俳優をずらりと並べた豪華さは、強く興味深かったし、それぞれの俳優のアクの強い演技は流石だったと思う。
(特にブラッド・ピットの馬鹿野郎ぶりは、「ベンジャミン・バトン」を観た後だっただけに、殊更強烈だった)
しかし、そういう利点に相反して、映画としての魅力をあまり感じることができない。
馬鹿馬鹿しさの中にしっかりと“巧さ”のあるストーリーだけれど、面白くない。
その原因の一つとして、豪華な俳優を揃えたはいいが、それぞれの直接的な絡みが希薄であることがあげられると思う。
同シーンに存在はしているけど、台詞の掛け合いがあまりないので、巧い俳優それぞれが「独り相撲」をしている格好になっている。
結果として一番面白かったシーンは、スター俳優の登場しない、CIAの管理職同士のやり取りであった……。
キャスティングの段階で力を注ぎ過ぎてしまい、肝心の映画づくり自体に軽薄な印象を、観客に与えてしまったことは、残念。