10.《ネタバレ》 怪獣映画は通常SFに分類されることが多いのですが、本作はほとんど科学的ではない。むしろオカルトの要素が強く、その点で異色の怪獣映画になっています。つまり正統派ではない。監督が平成ガメラシリーズの人であるためか、特に『ガメラ3』との共通点が見られます。「封印されていた伝説の守り神が復活する」というのはレギオンそのものだし。どうもこの方、こういう伝奇的な要素が好きらしいですね。ゴジラが日本を襲う理由とか(個人的には、そんなものどうでもいいんですが)、伊佐山老人の顛末とか。しかし、それらで話が面白くなったかどうかは、正直微妙。
あと、ゴジラに立ち向かう人や被害者を救う人を讃えていましたが、これも『ガメラ3』でありました。しかしそういうことにこだわるのであれば、地震や津波や火山の噴火など、自然災害を題材にした映画を撮ればいいのではないか。その方がリアリティがありますし、共感も得やすいでしょう。わざわざ怪獣映画でそこを強調する必要があるのか(これがあるようなのですが、それは後述)。
終盤横浜での怪獣対決は、妙に長ったらしく感じました。ギドラがパワーアップして復活することが主な原因でしょう。こうした、漫画かアニメに影響を受けたのかと思えるような展開も、どうかと思います。怪獣同士の戦いは、適度の長さでないと飽きてくるんですね。ここは長すぎます。あるいはしつこいというか。これもマイナス点。
主演の新山千春は科白回しがたどたどしいし、宇崎竜童はどう見ても軍人、しかも准将なんていう高官には見えません。軍人役なら、葛山信吾の方がよっぽどそれらしかったです。
さて、護国聖獣でも勝てなかったゴジラを最後に倒すのは、人間の作った兵器。要するにこれは、「人間の叡智は素晴らしい」という映画なのでしょうか? どうも先の「人間讃歌」と併せて考えると、あながち見当違いだとも思えません。しかしそうなると、人間を誉め称えるために怪獣を暴れ回らせたということでしょうか。どうもこの映画を見ていると、怪獣映画を見てよく感じるドキドキ・ワクワクする感じがあまりないのですが、そういうことであれば納得できます。たぶんこの監督さんは、怪獣よりも人間が好きなんでしょう。まあそれならそれでいいのですが、何にせよ本作にはさして面白味を感じませんでした。ツッコミどころのない、整合性のとれた話だからといって、面白いとは限らないのです。少なくとも、私が見たい怪獣映画というのは、こんなものではないですね。