6.《ネタバレ》 すごく惜しい作品だと思う。
プロットとしては陳腐になりがちな上に、ホラーやミステリーの中で使うと意外に扱いにくい「生まれ変わり」というネタ。
その難しい題材を上手く料理して、シンプルながらも、なかなか見応えのある作品に仕上げてあるのには感心した。「前世と現世の魂が別々のように表現されている」とか、「現世でもう一度殺される事と、復讐する事がどう繋がるのか」とか、「映画を撮影していた監督はどうなったんだ」とか、色々と突っ込みどころはあるけど、ホラーのストーリーとしてはしっかりしている。特に「前世での加害者が、現世での被害者」というようなミステリー仕立てのドンデン返しには見事に騙された。渚の最後の笑みも色々と深読みができて良い(単に恐怖で自我崩壊しただけなのかも知れないが、自分の仮説が証明できた事に対する喜びの笑みとも取れる。ラストシーンとして秀逸)。
ただ残念なのは、肝心のホラーとしての恐怖演出にセンスを感じないところ。
まず典型的なのが人形の存在。デザインからして不気味さを強調し過ぎで返って興ざめだし、早い段階から少女と共に目立ち過ぎている。表情や動かし方なども「チャイルドプレイ」辺りのパロディだし、ホラー映画に対するオマージュと称してお遊びを入れるのは素人くさいから止めて欲しい。そもそも「人形+少女=不気味」という設定がワンパターン。
その他、被害者の方々も顔を出し過ぎだし、「幽霊」を「ゾンビ」のように表現する見せ方にもセンスが無い。CGによるモーフィングも、観客に対して「作り事」である事を意識させるだけなので、表現としては正しくても、恐怖演出としては使用すべきでないと思う。
また、静かなところで急に音を出すという安易な驚かせ方もそろそろ卒業してくれ。言うまでもないけど、ビックリさせる事と怖がらせる事は別。目の肥えた現代の観客に安易な事をやっても、シラけさせるだけで逆効果。
それと劇場版「呪怨」でも思った事だけど、個人的にホラーというジャンルにメジャーな芸能人を使うのは止めて欲しい(その地点で「有名人が演技している」という事を意識してしまって、作品にのめり込めないから)。
ストーリーはよく出来ていたのに、ホラーとしての演出にセンスが無いのが致命的。邦画ホラーの傑作になれたかも知れないのに、もったいない。ストーリー8点、演出4点で、平均6点献上。