4.《ネタバレ》 大人向け映画と断言するほどでもないがまるきり子ども向けでもない。同時上映が若大将映画だったことからすれば「マタンゴ」(1963)並みの扱いということか。
全体構成としては日本の東西で別々の怪物が出現し、それぞれ勝手に移動して最後に富士山麓で出会う形になっており、海外公開が前提だからか各地の名所も映されている。ロードムービーというほどでもないが行く先々でさまざまな人々が登場し、岡山の田崎潤・佐原健二の組み合わせがほんのチョイ役だったというのがフェイント感を出していた。その後も「大怪獣バラン」(1958)の対潜哨戒機テーマに乗せて飛騨の白川郷まで追手が迫り、いろいろあってからイノシシが走り去ったところまでの流れが個人的には好きだ。
しかし問題なのがラストの締め方で、突然地面が陥没するというのも感心できたものではないが、海外版では突然のタコの出現のために怪人が次から次へと敵を求めるタイプに見えてしまっているのは非常によろしくない。
またテーマ的には、永遠の生命が果たして人間の幸福につながるのか、ということが問われていたようでもあり、実際にそういう生物が出て来た結果、必ずしも幸福ではない(「死んだ方がいいかも知れない」)という結論につながったようでもあるが半端である。またそれが原爆とどう関わるのかと思っていたが不明瞭なまま終わり、結果として広島から物語が始まった意味もよくわからなくなっていた。
そういうことで不足の点はあるが、しかし物語としては一本筋が通っていたようで、要はたとえ人が造った人間でも、人の心が通じるなら人間だ、というのが最終的な結論と思われる。当初、怪人は逃げてばかりでこんな奴が兵隊として使えるのかと思っていたが、しかし誰かを助けるために戦う決心をしてからは見違えるほど勇敢になり、生まれながらの兵士では全くないが確かに人間だ、ということを自ら証明していたようである。救出した男を仲間のもとに返してから、地底怪獣の叫び声の方へ向かおうとする姿は正直格好いい。顔に似合わずヒーローだったというしかない。
なお劇中の女性科学者は広島市内?の近代的アパートに住んでいたようだが、怪人が成長してみると部屋が2階だったことの意味がわかる。ここで怪人が見せた顔が何とも心細げで情けない表情で、それで観客としてもこの男に肩入れしてやらなければという気にさせられた。