1.《ネタバレ》 6点か7点で迷ったが、6点評価とする。東映実録シリーズへの愛に溢れた娯楽作だった。役所さんの演技も絶好調。また、やくざ役の役者たちの演技が非常に活き活きとしていて、今時珍しい昭和テイストな作品に俳優陣も気合が入っていたのだろう。
ただ、脚本及び作風はどう考えても「県警対組織暴力」と「トレーニング・デイ」を足して二で割ったような作品である。薬剤師の女を使った伏線など、多少工夫は凝らしているが、モデルとした作品以上のオリジナリティを本作は発揮できていないため、あまり高く評価することができなかった。背景・美術も含めたヴィジュアルデザイン、それから撮影スタイルも昭和を意識して作られているが、これが実にチープで噓臭い(笑)。東映実録ものへの愛は伝わるが、こちらが感嘆するくらいの時代の再現性や拘りは感じられない。そもそも論をいえば、昭和の雰囲気から程遠い松坂桃李が、コテコテの昭和な空間に存在している時点で、違和感が凄まじい。しかも設定が昭和63年、つまり1988年のくせにスーツや髪形は今風。メイク担当は仕事をしていたのか?とツッコミを入れたくなった。役所、音尾、中村、阿部の演技は素晴らしかったが、松坂、竹ノ内、滝藤は明らかにキャスティングミスないし本人の技量不足だろう。
結論すると、悪くない出来の娯楽作だが、オリジナリティという点ではやや不満があり、またキャスティングミスも目立つ。ヴィジュアルデザインも雑な仕上がり。7点評価をつけたかったが、粗が多すぎるため6点とする。