3.《ネタバレ》 映画の裏に国策・戦意高揚の狙いがあった事を抜きにしても、黒澤監督らしくないけど、美しい映画だなと思いました。主演の矢口陽子さんが眼に力があって、若手女子工員を引っ張っていくに値する適役だったと思います。
戦争中だし女だからと言って男に負けたくない気持ちと、無理がたたっての病気、そしてマンネリと疲労からくる能率の下降のイライラ。全てがリアルで1つの人間ドラマが展開していました。先生と呼ばれる入江たか子さんも非常に美しく、見守る立場としての役割がピッタリでした。
ラスト、故郷の母親の訃報を聞いても「故郷には帰りません」と突っぱね、仕事のレンズを検査しながら涙するシーンが非常に美しかった…。あのレンズ越しには確かな黒澤監督の愛情を感じました。気丈な女性がホロっと見せる弱さに男は弱いなあ・・・、60年以上経った今見返してみても、黒澤監督がこの女優さんを好きになった理由がなんとなく分かる。それだけでも十分価値のある作品ではないでしょうか?激甘ですが6点です!