9.アイディアは面白いし、最初のうちは映画にのめり込めた。しかし、ラストに行くに従い、だんだん尻すぼみになっていく。結論を言えば、この映画は起承転結のうちの「転」と「結」がイマイチだと思う。
掘り下げれば色々と深い部分が描けるはずなのに、表面の浅い部分で終始してしまったのが名作になり得ない点だろう。レビュワーの点数が6、7点に集中し、9・10点を付ける人はおらず。一方で0~2点を付ける人もいないというのが、この映画を最も端的に表していると思う。
一言で言えば、「面白いんだけど、イマイチな映画」の代表作かもしれない。
描くべきポイントとすれば、まずは当初のアイディアである「脚本なし、俳優なし、編集なし」というコンセプトが、思いもよらない視聴率の増加によって、だんだん歪められていくという視点が必要ではないか。
「真実」を写すはずが、いつのまにか「嘘」を写すことになっているという視聴率主義の恐怖や、マスメディアの姿勢・限界などのポイントをクローズアップすれば映画が面白くなると思う。そのためにも、あの女性プロデュサーはかなり重要な役柄なはずであり、あの扱い方には問題がある。
そして、プライバシーや尊厳の問題。
どこにでも何にでも相手の気持ちを考えることなく、カメラに写そうとする今のメディアを徹底的に糾弾して欲しかったところである。
人の恋愛を追うくらいならまだしも、恋愛や結婚の破綻など当事者なら誰しも放っておいて欲しいものであり、また親しい人を亡くしたときにでもメディアは首を出し、平気で人の心を踏みにじろうとする。さらに、誰しも人に知られたくない秘密は抱えているものだろう。そういう人々のプライバシーに土足で上がり込む現代のメディアに対して痛烈な批判を込めることが必要ではなかろうか。
さらに、エドが人気者になるに従い、だんだんと有頂天になっていき、他人からチヤホヤされるに伴い、人の気持ちや痛みを分かろうとする心を無くしていき、他人(友人、恋人、家族)との距離がどんどん離れていくという視点もあった方が良かったのではないかと思う。
このままでもそこそこは面白いけど、題材が良いだけに非常に勿体無い映画というのが個人的な感想。