9.《ネタバレ》 劇中の母親が痛々しいので見るのがつらい。これほど精神的に脆弱では保護者として心許ないと夫に思われるのも仕方ない気がする。また離婚問題を抱えた大変な時に、わけのわからない心霊現象にまで巻き込まれたのも基本的な運のなさを露呈した感じで、そういう面(本能的に危険を避けて通る素質がない?)でも先が思いやられるものがある。
そのままでは全てが母親の精神状態のせいにされかねないところだった(実際そういうオチかと思った)が、かろうじて味方の弁護士が事実関係をはっきりさせた上、不可解な部分にはこじつけ気味の説明をつけてでも、全てが理性の範疇に収まるよう計らったのは幸いと思われた。しかし自分だけで行動するなと言われたにも関わらず、予期しない事態に至るともう目先のことしか見えなくなって自分を抑えられなくなるのでは無意味になってしまう。この母親が娘を一人で放り出して現場に突撃していったことが、かえって悲惨な結末を招いたと思えなくもない。
結局のところ、この頼りにならない母親が身を棄てて娘を救うところまでを確実に行い、あとは父親の手に委ねたことで、娘にとっては最善の結果がもたらされたように思われる。心優しい人物だったらしいので気の毒だが、一人で子どもを守るには力不足だったということか。
ところで最後の後日談のようなものは、ここで新人タレント(水川あさみ)を顔見せする事情があって付加しただけに見えなくもない。しかし再会の場面を見ていると、娘が記憶していた唯一の言葉が母の愛情の存在を確信させ、それが娘の10年間を支えてきたと思わせるものがある。誰かに支えられなければ自滅するような母親でも、最も重要なこの点に関してだけは間違いなく立派な母親だったということらしい。それは自分の母親と同じ轍を踏まないということでもあったのだろう。
なお余談として、以前から水川あさみという人は美形かも知れないが可愛気がない人だと思っていたが、この年齢(18歳くらい)まで遡っても可愛くないのは同じだった。子役が可愛らしいのに比べ、10年後の姿としてこの人が出て来ると少し意外感がある。