1.《ネタバレ》 「屋根裏の散歩者」を現代に置き換えると、もはや屋根裏を散歩するまでもなく、高層建築自体がスケスケの“ガラスの塔”となってしまう。というオハナシ。
そのビルでは、シャロン・ストーン演じる主人公が引越してくる前に、彼女によく似た女性が謎の死を遂げている。さらにその後も続く怪死事件。
では犯人は誰なのか、事件の裏には何があるのか、普通であればそういう展開になるのだけど、この作品では、「覗く・覗かれる」のヘンタイ的な描写が続き、どちらが物語の中心なのか、この物語において殺人事件はどの程度重要な要素なのか(あるいは単なる見せ球で、実はどうでもよいのか?)すらも、わからなくなってくる。こりゃ、一段上のナゾ、です。
思えば江戸川乱歩だって、ナゾとその解明が主でヘンタイ描写が従なのか、それともヘンタイ描写を描きたいがためにしょうがなくナゾと解明を付け足しているのか、よくわからん場合があって。いや、トボけちゃいけませんね、後者に決まってます。
いやいや、そうじゃなくて、両者は不可分。どちらも必要、どちらもあってこそ、両者が深め合う。
主人公の前に現れる二人の男。片やトム・ベレンジャー、片やウィリアム・ボールドウィン。どちらもそれぞれ異なるタイプのヘンタイなので、またまた怪しさ満点。さて、物語はどういう展開を見せるか。
望遠鏡での覗きから始まって、誰しも、なーんか「覗き」ということに興味深々、なんだけど、やっぱりそれはグロテスクな事なのよ、ということ。無数に並ぶ盗撮モニターの異様さ。クライマックスにおけるモニターの破壊が、そのグロテスクさを戯画化していて、いやはや、ヘンタイ道もここに極まれり。もしも乱歩が生きててこの映画を見てたら、結構、気に入ってもらえたんじゃなかろうか。