2.《ネタバレ》 野球選手の熱狂的なファンが、選手の息子を誘拐し、ホームランを打つよう脅迫する、という、それはそれはツマラナそうな題材なんですけど、蓋を開けてみりゃ、これが妙にオモシロかったりするのです。
まず、ウェズリー・スナイプス演じる野球選手が、結構、ダメダメで、そんなゴルフの練習やってるくらいなら、ちゃんと野球の練習しろよ、と思っちゃうのですが、おかげで開幕から何だかグダグダ。でも、それに並行して、野球大好きダメ親父のロバート・デ・ニーロの、それ以上にどうしようもないダメっぷりが描かれており、ダメさ加減では数段上を行っており、もう、気持ちいいくらい。前半はこのダメダメ感だけで、お腹いっぱいになってきます。
そんでもって、便所でウェズリー・スナイプスとベニチオ・デル・トロがケンカしているのをデ・ニーロがこっそり見てる場面。普通に覗き見るような描き方ではなく、天井の歪んだ反射を介して描いているのが、いかにも病的で、アブナイ感じがよく出ています。
スナイプスの家の周りを徘徊するデ・ニーロ。溺れかけたスナイプスの息子を助けたことから、二人は知り合うことになりますが、「服が濡れたので着替えが提供される」、それがユニフォームだというだけで、どうしてここまで居心地悪さを感じるのか。小ネタながら、よく効いてます。
その後、二人が野球をする、というのもヤな感じですが、さらにはそこでの二人の会話。相手がどういう人間か知らないスナイプスは、これまた気持ちいいくらい、「この男にそんな答え方しちゃダメでしょ」というダメ回答を連発してくれる。すべて大正解、と言っていいでしょう。
ほとんど誰も予想できない、というよりはほとんど誰も期待していない、意外なラストまで、なかなかスリリングな展開でした。
スリリングといえば、やっぱりあの、客席の大観衆の存在が、映画を盛り上げていますね。スタジアムが、まるで古代の闘技場のように描かれています。野球選手は現代のグラディエーター。といったところでしょうか。