7.○公開初日だったからか、劇場の入り口で”いぬのえいが”のロゴが入ったハンカチをもらった。ハンカチなんて貰うのは恥ずかしかったが、いま考えれば助かった。映画館で涙が止まらなくなったのは初めてで、ハンカチが無ければ顔がグチャグチャになっていたかもしれない。
○大した期待を抱かないで観に行った映画が予想以上に素晴らしかった時ほど嬉しい事は無い。劇場には子供連れが多かったし、タイトルも低年齢層をターゲットにした作品のように思える。しかし独特のリレー方式による”切れ目が分かりにくい”オムニバスはメリハリが効いており、前半のコメディ部分の笑いもベタだがベタなだけに安心して笑えた。紛れも無い良作。犬を飼っている人、あるいは飼っていた人にとっては、年に一、二本出会えるかどうかの特別な映画になるのではないだろうか。
○どんなに演技が上手い役者でも、”涙を誘う”ことにかけては犬に敵わないかもしれない。犬っていうのはポーカーフェイスで、人間のように笑ったり泣いたりはしない。だけど人間と同じように喜怒哀楽を持っているというのは、犬を見ているだけで分かる。犬がしっぽを振ればこっちまで嬉しくなるし、首を斜めに傾げて見つめられると何だか優しくなれる。ある意味、人間以上に表情豊かである。だから、ポチが救急車を追いかけて走る姿だけで泣けてくる。
○犬を飼うっていうのは大変なこと。散歩は気分や天気に関係なく毎日行かなきゃいけないし、餌とか家とか準備する物も沢山あるし、道の途中のゴミ食べるし(ウチだけ?)、すれ違った犬とは喧嘩するし(これもウチだけ?)、走るとすぐバテるし(これはウチだけ)。それに犬は人間の4倍のスピードで年をとるから、必ずつらい別れをしなくてはいけない。本当に面倒な事ばかりで、じゃぁなんで飼うのか? それだけ可愛いのか? とも思ってしまう。が、やはりそれだけ可愛いのである。
○犬の、犬による、犬を愛する人の為の映画。脚本や演出ではなく、犬を飼ったことのある人が抱える想い出や気持ちに共鳴して感動をいざなう。そりゃ泣くさ。家に帰ったら、いつもより我が家の犬が数段可愛く思えたことは言うまでもない。あの黒い瞳に、自分はどのように映っているのだろうか・・・?