1.《ネタバレ》 とうとう密告フォームまで登場したこの国の今現在と重ね合わせず観ることは困難であるという不幸。
憲法修正第一条を巡る言及から何から引っくるめて、ただの感動的な物語映画として見終えさせてはくれない。
映画でも簡潔明瞭に語られている『スパルタカス』の顛末は、『カーク・ダグラス自伝』の『スパルタカスの戦い』の項などにも詳しく記述されているが
スタンリー・キューブリックとの確執なども加わって実際はより複雑で興味深い人間ドラマがあったことがわかる。
その辺りも映像化されれば面白いのだろうが、尺的にはやはり端折ったのが正解だろう。
カーク・ダグラスが「名前を取り返してくれたこと」への感謝のエピソードは、劇場でそのクレジットを見るブライアン・クランストンの表情によって
視覚的にも印象深いものとなった。
脚本家を題材とした映画らしく、映像的な突出はないものの、台詞の妙味と劇展開の面白さで一気に見せる。
手動のタイプライターによる速筆がさらにテンポを生む。
エドワード・G・ロビンソン役やジョン・ウェイン役の俳優らも、顔貌の相似以上に佇まいと台詞を語る口跡が皆素晴らしく、
ジョン・グッドマンの啖呵には胸がすく。