4.山田洋次監督が、ある映画サークルの上映会に呼ばれて参加した後の喫茶店での茶話会でメンバーの一人に「なぜ、悪人を描かないのですか?」と聞かれて「映画の中で悪人を描くのは簡単だけど、善人を描くのは難しいことなんだ」と厳しく答えたそうだ。
まさしく、その難しさを、まざまざと感じさせる映画。ここで描かれる善人を監督が信じているかどうかに、かかってるからね。善人だらけの、このドラマが説得力を持つのも、うそ臭くなるのも、監督の信念しだい。原作を読んでいた僕はラストの処理を、どうするか気になったけど、まずまずではないでしょうか。結論から言うと、大好きな映画。「どら平太」よりは数段上だと思う。日本人って、こうだったんだよな、いや、いまだって、こういう人達がいるはずだ、いてほしいと、痛切に思わせてくれる。傑作じゃないけど、フェンスギリギリのホームラン、大事にしたい佳作。