10.《ネタバレ》 「花」と「おおかみおとこ」の背景が不明瞭なのが気になります。
・大変な思いをして大学に通っているのに、何故子どもを産むことをよしとするのか?
・おおかみおとこは何故、花に自分がどうやって育ってきたのかを語らなかったのか?(言ったのはせいぜい種族の末裔であることくらい)
・おおかみおとこ自身も、子どもを産めば大変な思いを花にさせてしまうことはわかっているのではないか?
「花」は冒頭で言ったとおり、奨学金を使い、アルバイトをしてまで国立大学に通っています。
そこまでして大学に行っているのに、子どもを産み、アルバイトも辞め、休学どころか中退をしてしまします。
大学を中退をするというのは、本人とってみれば大きな決断だと思うのですが、本作ではそこに至るまでの葛藤は全く描かれていません。
そしておおかみおとこも、花が大学を卒業することも待たず、子どもをつくる。
さらに、年子でもう一人つくる。
しかも、その子どもは、ただの子どもではないのです。
まったくもって勝手だとしか思えませんでした(しかも当の本人は理由が不鮮明なまま事故で死んでしまう・・・)。
この作品は、そうした「子どもを持つことの後ろめたさ」が全く描写されていません。
「惜しみのない子どもへの愛情」を描くためには、それは必要ではないと判断したのかもしれません。
おおかみおとこの背景や、花が大学に通っていた目的を描けば、よけいに子どもを産むことに賛同しにくくなってしまうだろうし、花が試行錯誤をする描写も希薄になってしまうので、あえてそうした理由づけは避けたのかもしれません。
そうだとしても、最低限の納得できる理由が欲しかった、彼らに感情移入がしにくかったのも事実です。
この映画の、一番大きな欠点だと思います。
それでもこの映画には素晴らしいところが多い!
・雨、雪、花が大雪原を駆け抜けるシーンの疾走感と躍動感、
・2人の学年が変わっていくことを、横からとらえた画で左右に動かしながら表現するシーン、
・カーテンがゆれるたび、狼になったり、人間にもどったりする雪、
そういったアニメならでは、映画ならではのシーンに、どうしても心を動かされてしまいます。 サントラもオススメですよ。