1.《ネタバレ》 どんな映画も見終わった後、時間が経つとあれこれ考えてしまうものだが、やはり見終わった後のこの清々しさは大事にしたい。
原作を先に読んでいたのでキャスティングが明らかに自分のイメージとは違っていたのが不安であったが、映像になってみると、このキャスティングはあざとくも感じるがアリであると思いました。
厳しい自然の風景と対比するような「前向きな顔」というのは映画的に必要だったのだと思います。原作のエピソードを大幅に構成し直して「何が映画的であるか」を抽出したような作りになっていると思います。
原作で描かれていた山小屋経営の事情や、登山客のエピソードにはあまりつっこまず、挫折を味わった人々の回復というものがあまり描かれていないように感じるが、そこは文学の仕事であると言わんばかりに、圧倒的な風景と登山の過程、山小屋の描写は原作から持っていた自分の曖昧なイメージを遥かに凌駕してくれた。
ドラマの背景に山があるのではなく、風景がドラマを内包しているようなカメラマン兼監督の独特の視点は「剣岳」に続いて健在に思います。
この映画を見て、安直に素人が高山に登ろうとするのは危険に思うが、やはり「登ってみたい」と思える清々しさは確かに感じました。