8.《ネタバレ》 この監督と主演は、同じくIRAを題材とした「父の祈りを」をという映画を撮っているけれど、自分はこちらの方が良かった。 「主人公はIRAの元活動家でボクサー、元恋人はIRA幹部を父に持ち、二人は幼なじみで愛し合っていたけれど、主人公が投獄されてから元恋人は結婚し別々の道を歩み、時がたって主人公が出所して・・」という所から話が始まる。 「二人の成り行き」を軸に「アイルランド問題という政治のテーマ」と「ボクシングというストイックなテーマ」がシンクロしていく。 月並みな言い方をすれば恋愛がテーマになると、そちらに比重が傾き軽い映画になってしまうのだけれど、この映画は非常に重みのある内容で、見終わっても余韻が残り、しばらく二人のその後の生き方を考えていた。 それにしても、これだけ世界では宗教や人種の対立があって、テロや戦争が起こっていて、「何故そんなことが」と思うけれど、宗教や人種対立のない日本という国がかえって特別なのでしょうか? この映画を見ていても、同じ宗教を信仰していても宗派が違うだけで、住む場所を区別して対立しあう。そんな全く経験・体感しえない話なので、かえって映画に没頭できたのかもしれません。 映画の途中で主人公と元恋人が14年間閉じこめてきたお互いの想いを確かめ合うシーンも胸が詰まって溜息がでますが、一番印象に残るのは主人公と元恋人とその息子が一緒に生きることを決心して、車で検問中の橋の上をゆっくりと走り去る場面。 その少し前まで主人公はIRAに捕まっていて、そこから元恋人の運転で逃げたのだけれど、元恋人の心配そうな顔がアップされてそこでエンドロール。 主人公が助かって、今までの想いがかなってうれしいはずなのに、何故表情が緊張しているのか、どこへ向かおうとしているのか、わからないままです。 おそらく、元テロリストの主人公とIRA幹部の父を持ちなおかつ投獄された同志である夫を振り切る決意をした元恋人の行く末には明るいものはないのでしょう。イギリスへ渡っても、二人が住んでいる今の町に戻っても、対立している隣の地区へ行っても・・・ そのことは二人にもわかっているけれど、それでもあえてその道を選択した、せざるを得なかった・・・ 非常に強い意志を感じたストイックな、まさにタイトルとラップした、味わい深い映画でした。 【たくみ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-01-21 22:02:34) |
7.《ネタバレ》 北アイルランドでの宗教間・民族間の憎しみの深さにいろいろ考えさせられました。「お互い共存していくようにすればいいじゃん」とキレイ事を言うのは簡単ですが、中々難しいですよね・・・・・・。(敵役の殺害現場にその奥さんが佇むシーンは非常に心に残りましたね・・・・) ストーリーは見応えがありましたが、IRAの描写が何かマフィアっぽくなってたような感じがしたんですけど実際にそうだったんですかね? 【TM】さん [DVD(吹替)] 8点(2006-12-09 20:54:59) |
6.見ててつらくなってきた。アメリカでいうKKKみたいな存在だけど、その存在ってすごいんだなと改めて実感。一見ダニエル・デイ=ルイスとエミリー・ワトソンのラブストーリーかなと思いきや全く違っちゃった。。ダニー・フリンという役柄とボクシングでIRAに立ち向かっていく姿って言うのが物凄くカッコイイ。ジム・シェリダンっていう監督はほんと、映画を作るのが上手いな。 |
5.アイルランドという国と、アイルランド人という人間と、アイリッシュという頑固さを、もっとも正確に描いた映画だと思う。 【永遠】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-05-27 03:56:17) |
4.《ネタバレ》 ダニエル・ディ・ルイスとか他の人もすごく良い。抑圧された社会の悲惨さが伝わってきたが、自分の運命を怨むのではなく、受け入れて生きるという主人公の生き方が示されている。すばらしい。裏切り者を精算してしまうという後味が悪い最後にするのかと思ったけど、奥さんがすがって泣いている姿を見て救われたような気がした。 【さら】さん 8点(2005-03-17 13:58:01) |
3.見る前は、この監督・役者コンビへの期待半分、ボクシング映画なのにIRA?なんの関連があるんだ?なんか暗くて見るに耐えなそうな題材だなぁという思いが半分だったんですけど、見事にボクシングとIRA、そして恋愛までどれもが必然的なものとして絡み合っていました。全ての描き方に納得がいきました。アイルランドはイギリスに支配され差別の対象であったので、双方が混在する都市で反発がうまれるのは理解できるにしても、なぜ世界的に知られるテロ集団にまでなったのか、その当事者の心理や、悲劇を繰り返さざるを得ない状況が自然にわかりやすく描かれていたと思います。憎しみの感情をつのらせ逮捕された仲間のためにもあくまで戦おうとする人。やりすぎだと思っているが協力するしかない人。憎しみの感情を争いのない未来へつなげようとする人。復讐は復讐をうむん ですよね。いつの時代も必ず。しかも仲間を犠牲にして時には仲間さえ自らの手で殺してしまう。DDルイスの「人を殺したくはないが、この街は人を殺したい気分にさせる」といったセリフがズシリと重かった。仲間を家族を苦しめ殺した人を本気で愛さないと世界平和は実現しないんだろうな、という厳しい現実が心に浮かびました。その第一歩がそれぞれの想いをルールの中での戦いにぶつけることなんでしょう。興味のある人には面白いでしょうけど、暗い話で映画として映像的に楽しくないので、8点。 【るいるい】さん 8点(2004-12-23 21:17:23) |
2.この頃のアイルランドの状況についてはあまり詳しくないんだけど、緊迫感が非常に伝わってきて目が離せなかった。ダニエル・デイ・ルイスも素晴らしい。 【Andy17】さん 8点(2004-09-18 17:42:19) |
1.映画として、とても明確な意志を持った作品。訴えたい確たるものがまずあって、それを表すためのストーリーがあり、恋があり、ファイトがある。けれどそのせいで、エンターテイメント性は薄い。主演も演技派No.1ともいわれるダニエル・デイ・ルイス&エミリー・ワトソンで、素晴らしい演技(ダニエルは本当にボクサーとしてトレーニングを積んで、鼻の骨を折ったらしい)全開なんだけど、やっぱりオジサンとオバサンで、ファッションも地味で、華やかさに欠ける。ストーリーに政治がからんでいるから、聞き慣れない用語がいくつか出て来て難しい。話についていくのが精一杯。でも確実に、見た後何かを心に残してくれる映画。ああ、この映画を見てよかったな、と思える。それはこの映画の貴重な面だと思う。 【ともとも】さん 8点(2003-07-29 22:07:26) |