6.本作はヴェネチア国際映画祭で賞もとった国際的にも評価の高い作品である。
個人的には『残菊物語』と並んで溝口作品の中では最もお気に入りな作品となった。
オープニングのキャスト表示からして胸躍る。
重厚な音楽と共に、これから溝口作品が始まることを教えてくれる。
これからも溝口作品を観るにつけ、まるで『男はつらいよ』のオープニングを観るかの様に、条件反射的に胸躍ってしまうに違いない。
そして宮川一夫撮影による芸術的な映像美は言うまでもなく美しい。
単に美しいだけでなく、その映像を通してその世界に引き込まれていくような感覚を覚える。
この感覚がクセになってしまったので、もはやそう簡単には溝口映画から抜け出せそうにない。
そして出演陣では、香川京子に目を奪われた。
美しいというか、かわいいというか。
他の作品で何度か香川京子を観たことがあるが、この作品の香川京子が一番魅力的だった。
足の先まで可愛らしかった。
『ワンダフルライフ』での“おばあちゃん”香川京子を観てしまっているだけに、少々気分は複雑だが(笑)、今だ存命でいらっしゃるのは嬉しい限りだ。
『残菊物語』でもそうであったが、正直、中盤でダレル部分があるにはある。
しかし、これも『残菊物語』と同じく、“ラストの怒涛な展開”がそんな不満を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれる。
本作のラスト15分はそれだけ凄まじい印象を残し、涙無しでは観ることができなかった。
こういったラストの怒涛な盛り上がりが、更に溝口作品へのハマりを助長する。
ますます溝口から抜け出せない。
困ったもんだ。
むちゃくちゃ忙しい毎日なのに、困ったもんだ。
あー、困った。
溝口健二には困った。
これから一つでも多くの、美しすぎる溝口作品を観ていきたいと思う。