《改行表示》66.《ネタバレ》 (2002年、新宿文化シネマでの鑑賞時のレビュー) 「雨上がる」で黒澤明の遺稿となったシナリオを映画化した、小泉堯史監督の作品。 奥信濃に移り住んだ夫婦と、村の人々の生活を描いています。 舞台も地味ならキャスティングも地味(寺尾聰と樋口可南子という夫婦が主人公)。そのうえタイトルも地味という、どう考えても若者受けしない作品であり、実際私が観た上映館でも、9割以上は中年・老年層でした。 そんな、若者への媚びへつらいを拒絶したかのような作品なだけに、興行的には低調のようで、実際私が観たスクリーンも、50席足らずの極小スクリーンでした。 しかし、このまま野に埋もれてしまうのはもったいない、とてもいい作品でした。 「農村を美化しすぎている」という批判があります。確かに出てくる人みな善人ばかりで、浮世離れしているかもしれません。 しかし、それでいい、と思うんです。理想社会なのかもしれないが、こんな社会もあるよ、こんな生き方もあるよ、と提示してくれただけでもうれしい。社会の暗い面、いやらしい面を描く作品が多いなか、その対極にあるような善意溢れる作品があったってい そして、この作品には何よりの「宝」があります。「阿弥陀堂」に住むおうめ婆さんを演じた北林谷栄さんの演技が、神がかっていると表現したくなるくらい、素晴しい。91歳のおばあさんが、どうしてこうも躍動感溢れ、ユーモラスなのに情に厚いという役をこなせてしまうのか。 このおうめ婆さんの言葉である「阿弥陀堂だより」がまた素晴しい。 例えば、こんな調子。 「目先のことにとらわれるなと世間では言われていますが、春になればナス、インゲン、キュウリなど、次から次へと苗を植え、水をやり、そういうふうに目先のことばかり考えていたら知らぬ間に96歳になりました」 そんな美しい言葉を紡ぐおうめ婆さんを見るだけで、この作品を観る価値はあります。それくらい素晴しい演技です。 小手先の目新しさではなく、正統的なつくり方で良質の作品を作ることができる、こういう監督が映画を作り続けられる限り、日本映画も捨てたもんじゃない、と思います。 【りょうち】さん [映画館(邦画)] 8点(2021-02-02 23:29:22) |
《改行表示》65.《ネタバレ》 北林谷栄を使い過ぎだろ! この年齢で、ここまで出演シーンが多かったら、さぞかし疲れたでしょう。 にしても流石!凄い!年季が違う! この映画は、人それぞれの生きてきた歴史を感じさせる。 まさにそれを体現してみせたのが他でもない北林谷栄であった。 田村高廣が演じた爺さんは威張り過ぎだな。 これもまた、この人の人生の歴史を物語っているのだろう。 さぞかし偉そうに生きてきたに違いない。 香川京子の使い方がもったいない。 もっと香川京子を見たかった。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2020-09-13 01:48:58) |
64.変わりゆく四季折々の美しい風景に、人間の栄枯盛衰や生と死を重ね合わせていて、生きるということを色々と考えさせられる映画でした。 しかし、この村自体がまるで天国のように平穏すぎて、あまり人々の生活感が感じられなかったのは残念。例えば、村人や子供たちに問題児が一人くらいはいないのだろうか? この地形では大雨や大雪になれば生活も交通も苦労するだろうが、そういった描写も皆無でした。理想郷としての田舎暮らしという良い側面ばかりを見せていて、その厳しさにはほとんど目を向けていない気がします。 (そう、まるで田舎暮らしの案内ビデオのよう) とは言え、やはり風景や子供たちの素朴さに心が癒されたのは確か。もしかしたらこの映画って、こういう感想だけでいいような気もします。 そして何より、おうめさん家から望む眺望が素晴らしかった。正しい人生を送ってきた彼女に相応しい、まさに "人生の特等席" ではないでしょうか。 【タケノコ】さん [映画館(邦画)] 6点(2020-03-22 16:28:17) |
《改行表示》63.《ネタバレ》 年齢を50超えたくらいから、こんな静かな映画もいいものだと 素直に思えるようになった。 何より自然が雄弁だ。 樋口可南子のきれいな容姿が雄弁だ。 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2019-11-23 23:24:36) |
62.こういう映画、自然と田舎と善人との物語、はたまにはいいと思う。日本的だ。ただし、観る時、観たい時の感覚に評価は分かれる。 【simple】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2019-05-28 21:14:07) |
《改行表示》61.《ネタバレ》 何度でも観たい。 すっと落ちてくる言葉 演技 自然 表現。 一度観たら、何もない日曜日に本を読みながらバックグラウンドムービーとして流すという楽しみ方をしてもいいかもしれない。 この映画を見て、新しいことより古く見落としているものをもっと大事にしたいと思った。 特典のメイキング、その他を見て泣いた。 北村谷栄さんに泣かされた。 お梅さんの登場のとき、(うわっ 小汚いばぁさん出てきた)と思った。 でも、会話の中で主人公のおばあさんのことを評して 『苦労がよく身に付いた、いい人でありましたよ』 といった言葉を聞いてから、この映画にすっと落ちていった。日本の表現力ってすごい。 素晴らしい映画だって言いたいだけなのに なんともまとまりがないコメントになった。 もっともっとうまくなるよう歳を重ねたい。 【おでんの卵】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-10-26 21:03:22) |
【noji】さん [映画館(邦画)] 6点(2013-06-09 23:20:29) |
《改行表示》59.いやーすばらしい、こういう映画が好きなんだなあ。日本の美しい自然、四季の風景、そこに描かれている人たちの自然な演技。前作「雨あがる」は黒澤明の呪縛にあっていたが、今度は小泉監督自身の脚本であり、自然体を推し進める彼の良さが十分に出ていたと思う。 90歳を超えて脚がままならぬ身体で北林谷栄さんが出演に踏み切ったのは、盟友重さん(宇野重吉)の息子寺尾聰が主役を務めるのを知ったからだという。彼女は人生最後の映画出演をこの聰ちゃんと一緒にやりたかったと言っていた。 北林さんといえば、ビルマの竪琴でおばあさんをやって以来、50年近くも日本のおばあちゃんであった。(私が見た映画の中で、最高回数を誇る女優)昨年亡くなられたそうだが、謹んで哀悼の意を表したい。 その他、寺尾聰の妻役の樋口可南子の復活、死を目前にした田村高廣と妻の香川京子、声が出ない小西真奈美など脇役もすべて小泉監督の意に沿った演技だったと思う。 人は大自然の中で生きている、いや生かされているという実感を得る。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-10-05 01:47:31) |
58.田舎のきれいな風景見せてそこに住む心優しい人たちの交流をみせて田舎っていいでしょってのをみせたかったんだろうけどいかんせん、そうはならなかった。いやこの映画がわるいんじゃなくって今の気持ちに当てはまらなかった。こういのってみる時期によってもかわるんだろうね。 【とま】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-10-01 21:32:16) |
57.この映画の空気感を作り出していた北林谷栄はすごいですね。映画全体がのんびりまったりムードでありながら飽きないのはすごいと思います。ただ、主人公の上田夫婦、田村・香川演じる幸田夫婦は、夫婦の理想像なのでしょうが、あまりにも毒がなさすぎて、逆に現実感がなかったです。秋の夜長にひとりで静かな気分に浸りたい時にはいい映画だと思いますが、自分が観た時の気分は真逆だったため、作品の真意にふれることができず残念でした。こってりソースのステーキを食べたい時に精進料理を食べたような気分です。映画に罪はありません。映画を楽しむなら、その時の自分の気分に合った作品を選ぶこと。この作品を観て、つくづくそう思いました。 【ramo】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-09-07 18:56:44) |
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56.前から気になってたんですが、やっと見ることができました。いや~良かったです(^O^)こういう映画がいいんですよo(><)o都会に疲れた女医が主人の田舎に心の傷を癒すために帰ってくる。自分を取り戻そうとする妻とそれを優しく支える夫。特にコレといった事件が起きることもなく、それを取り巻く人々の日常を写してるだけ。でも俳優さんたちの演技はみなしっかりしてて、四季の移ろいと牧歌的な日本の原風景が心を和ませてくれる。優しい気持ちになれる素晴らしい作品です。この手の映画を面白くないって人は、テーマとか背景とかきっと映画に色んな物を求めすぎてるんだろうな~なんて思ったり。こんなゆったりまったりとした時間が流れてる映画があってもいい。おうめ婆さんみたいなおばあちゃん、きっと誰もが心の中に一人くらいいるんじゃないかな?DVDが欲しくなりました。とりあえず録画してあるHDD消さないようにしないと… 【鉄仮面】さん [地上波(邦画)] 9点(2011-06-19 11:23:18) |
55.年配の方のための作品ですねぇ…。北林谷栄さんの名演は見逃せないし、メッセージとか色々伝わってくるのですが、さすがにもう少し展開がほしい。 【j-hitch】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-08-17 21:46:08) |
54.《ネタバレ》 癌の痛みからどうしても伏していられず、それでも座して騒がず、妻に死期を悟った挨拶をする。幸田の潔い姿に、さすがに刀を所持していただけの侍魂を持っていると感動した。一瞬泣きくずれそうになった妻は、夫の死の覚悟を乱さぬよう必死で耐えて、やがて座りなおすのだが、その一過程がたとえようもなく美しい夫婦愛に見えて、侍とその妻の美学を感じた。外国人は刀やちゃんばらに熱くなるけれども、侍のスピリッツがあって初めて美学に通じるものだとは、なかなか分かってもらえないだろう。強ければいい、かっこよければ全てよしだから、例えば、淋しいけれどもモンゴルの人たちは朝青龍引退の件に対して反日感情を募らせるのだし、彼らがこのシーンを見ても、どうして妻が泣き崩れないのか理解できないだろうと思う。また、人の顔をアップにして必要以上に喜怒哀楽を強調せず、かなりカメラを引いて遠巻きから人々を映している。その姿勢には、監督の誠実さを感じずにはいられない。 【tony】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-03-14 14:58:35) (良:1票) |
53.《ネタバレ》 前提となるべき主人公のパニック障害というものがどういうものであって、それがどのような影響を与えたのか、という点がほとんど描かれてない時点で失格。ストーリーはいきなりその辺をすっ飛ばして、信州の風景と周りの「いい人たち」先にありきでどんどん先に進んでしまう。つまり、設定によりかかっているだけの内容になってしまっているのである。これではいくら風景が美しくても意味がありません。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2010-03-08 01:29:24) |
52.病気で死に行く人、若くして死にかけている人、年齢的にいつ死んでもおかしくない人、何百人もの死を看取ってきた人…。それぞれの登場人物にまつわる死が描かれている。この映画は死で満ちている。でも抹香臭くない。不吉な感じもしない。もちろん映画としての演出なんだけど、繰り返し描写される信州の豊かな自然が死を包み込んでいる印象だ。病気にしろ、寿命にしろ、人はいつか死ぬ。そして、人の死生も自然の流れの中にある、ということではないだろうか。都会で暮らしていると、盲目的に死に対する恐怖が先行する。都市環境が死を被い隠し、生のみを強調するからだ。対照的に、自然は生と同時に死をも包含した概念だ。その懐に抱かれれば、都会で暮らすよりは素直に死に向き合える気がする。いずれ自分も死を迎えるときには、自然の多い場所の方が心安らかに逝けるのではないか、などと考えてしまった。冒頭で朗読される「雨ニモマケズ」の一節。「南ニ死ニソウナ人アレバ行ッテコワガラナクテモイイトイヒ」はその死生観を表現していると思う。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-07-25 06:36:42) |
51.《ネタバレ》 原作を読んでから観ました。レンタル店でDVDを借りようと思いましたがなかなか見つからず。題名から、邦画ホラーコーナーに入れられて、らせん、怨念、阿修羅のとなりかな?とさんざん迷って、無事ドラマ、ファミリーコーナで発見し安堵。原作同様いい映画でした。しかしおうめさんと小百合ちゃんを主人公にすればよかったのにと思います。阿弥陀堂だよりは、このふたりの絶妙なコンビによって生まれてた、信州無農薬、とてたて新鮮エッセイなのですから。無理してつけた幸田先生のくだりはいらなかった様に思えます。それより、女医が看取った300人の壮烈な最期と阿弥陀堂に住むおうめさんの人生観の対比、おうめさんの傍らで自ら病気と戦っている心優しい小百合ちゃんの姿を、孝夫の目から飄々と描いてくれたらそれだけで良かったのにと思いました。美しい信州の自然を織り交ぜて描けば、それだけで深い味わいのある映画になったと思います。ハッピーエンドは良かったのですが、それから5年後が気になりました。おうめさんは101歳、はたして生きているのだろうか?、小百合ちゃんの肉腫の再発はないだろうか?、高齢出産後の美智子は、医師としての仕事と育児を両立できるのか?、孝夫との熟年の危機は訪れないのか?などなど…。実はこの後が深いのですが、おうめさんの言葉どおり、「小説はいい気分になるために読むもんじゃ。やーな気持ちになりたくて読む馬鹿はいねーですよ。」そうか、おうめさん、やっとわかりました。余計な心配はしないことですよね。 【杜子春】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-09-29 17:52:22) |
《改行表示》50.《ネタバレ》 映画が料理だとすると、ここに使われた食材はすべてもともとが「生」「死」「癒し」なのである。「他のものが一切入っていない料理」という、ある意味珍品といえるかも、のメニュー。例えば、「憎しみ」「妬み」「嘘」「偽善」「怠慢」などはこの映画のどこを探しても出てこないでしょう。 ということで「いい人しか出てこない」というより、「3つの要素だけで作ってある」なのだ。 「仕事」というのは「他人の要求に応えることである」と言ったのは橋本治。そして、「他人の要求に応えすぎる」と、人は「消耗」する。たとえ他人の死を見取りすぎたという特殊な職業下でなくたって、「他人の要求に応えすぎる」のは不健康なことで、職業としてであっても「消耗」は避けられない。私はそれが身にしみてわかる。美智子先生の置かれた状況がよーーくわかる。 村に着いても、最初は発作も起こして「これで診察できるのかいな」という頼りなげだった美智子先生が、次第にキャリアウーマンぶりを取り戻してバリバリになっていくのがおもしろい。比べてダンナのほうは一貫して同じペース。いいかげん寺尾は見飽きたけれど、孝夫役は彼でなければならなかったというのはうなずける。 さてこの村の人々がいたずらに死を恐れず穏やかに生きているのは、梅さんの存在ゆえである。 死んだ経験のある人は誰もいないので皆「死」が怖いのだけれど、「限りなく死に近いところに生きる梅さん」の存在によって、人々の「死の恐怖」は緩和されることになる。昔の船旅に不可触の人柱を乗せたように、梅さんは「不吉なもの(死穢)を全部引き受けてくれる」身代わりのような存在だ。 よくできたシステムだと思うが、このような存在は昔は賤しまれていたのではないかと考えるのが妥当だ。最も卑なる聖=アンタッチャブル=有形無形に疎外(隔離)する、というのが日本の文化だ。 映画ではそんなことはみじんも描かれないが、私は「梅さん=アンタッチャブル」という意識で見たほうがいいと思う。それで初めて「なぜ一人であんな便所もないところに住んでいるのか」「なぜ家族の訪問が無いのか」「人が死んだ時しか村人が訪れないのはなぜ」などの疑問が解ける。 偉すぎるニョーボの亭主であるというのも実は努力と技術が居るのでバカにしたもんではなく、どんな男でもなれるというものではありませんね。たまにはこんな珍品も、の一作。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-07-01 15:14:37) (良:1票) |
《改行表示》49.善人ばかりで大した事件も起こらない、そういう映画は全然あってもよい。だが、根本的に思想が浅く甘すぎる。キャラクターも人物造形が薄っぺらくて、俳優陣それぞれが重みのある演技を見せているのがもったいなくてしょうがない。 映像も、自然は美しく、また、和室などでは望遠レンズを多用して黒澤映画を思わせるようなハッとする瞬間もあるのだが、安っぽいテレビドラマのような映像も混じっていて統一感がない。編集もうまくない。演技部分とドキュメントっぽい部分(地元のおばあさんたち?)も全くトーンが違っていてチグハグだ。前作「雨あがる」を作った人とは別人としか思えない。 【とと】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2008-02-21 03:29:58) |
48.信州の自然の中にとけ込み癒しを求める主人公(樋口可南子)像を描くというのに、エルメスのバックを常に手放さない、ロイヤルコペンハーゲンの陶器を使う、時計は多分シャネル、洋服は常に23区(これはやや地味)…これって、四駆で河を汚すBBQをしておいて自然を親しむっていう都会人のパロディなんだろうか。◆試みは分かるが、この映画を2時間以上にしてしまうプロデュースの甘さが、邦画をだめにしてしまうのでしょうね。それに医療面でもう少し、専門家に監修して頂いたほうが良かったのでは?手術に入る場面がきつい。 【みんな嫌い】さん [映画館(字幕)] 1点(2008-01-24 08:32:59) (良:1票) |
《改行表示》47. 博士の愛した数式/雨あがる と同じ路線だ、と思ったら監督が同じだったのですね。こういう癒し系の話は嫌いではないけれど、世の中はいい人ばかりではないですからねぇとハスに構える人も出てくるんじゃないでしょうか。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-06-01 18:38:06) |