77.《ネタバレ》 映画ってやはり残るのは映像、演出なのだと思いました。
長い間記憶に残っていたのは、パートカラーの煙の画面。
それを見たさに見出し、あれっ忘れてるこの人たちは誰?と
映画が進んでゆくのですが、面白い。
自分で思い出しながら推理していきます。
見たのに忘れてる、忘れてるけど見覚えはある・・
なかなか楽しく前半が過ぎた後、気がつきました。
グリコ・森永誘拐事件に似てないか?
他にもこんなのあったような・・?
昔の日本のモノクロ技術ですから、海外のモノクロとは
全く画像の質は違い、黒い部分はつぶれ非常に見にくい。
しかもすごい人数が出てて誰がしゃべってるかわからない。
カメラワークも3場面をひとつに撮るから、
よけいわかりにくい。前半の、大広間の主人公、廊下の刑事、
二階から降りる家族を奥行きを持たせ、
1カットで撮ってるんです。字幕を利用しました。
これでセリフに名前も書かれ、理解しやすくカメラも楽しめる。
病院での窓を枠にし、窓の手前には刑事。
向こうに階段を上る犯人と手のアップ。うまいよね~!
もちろん特急列車のトリックもスピード感たっぷりで、
外の風景の誘拐犯がリアルで感動しました。
煙突の煙の色はずっと暖めてきた記憶のせいか、
えっ?こんな色だった・・?とちょっとガクリ。
後半のモノクロはかなりごちゃつき黒がつぶれてた。
肝心のお話についてですが、見終わった後いやな気分になり、
こんな後味の悪い映画だったかなあ・・と。
でもその気持ちを問い詰めすっきりしたいために考えました。
犯人は権藤をなぜ呼んだのか?罵倒してほしかった。
そうすれば救われるのでは?救われなかった犯人は、
ラストのシャッターにより境をつけられる。
天国から地獄に高台の金持ちを落としてやった。
自分は地獄のままの位置にいる。ののしり罵倒しろと。
だが権藤は地獄から天国に這い上がろうとする
自身の希望を説く。貧困の問題でなく、心の位置なのだ。
前半から中盤までの高台の屋敷の中で、
被害者でありながら主人公の位置が変わるのが面白い。
十二人の怒れる男を思い出しましたよ。
私がすごいなと思ったのは、この作品に恐ろしいくらいの
庶民性を感じることです。
時代は違えど、日本のどこでもあるかもしれない風景に。
高台の金持ち、電車(江の電がいいね)、新興住宅地の
影に隠れたアパート・・