68.長年映画を見続けていると、面白い映画と面白くない映画の判別は大概的確に出来るつもりになっている。
トム・クルーズとキャメロン・ディアスという、“今更感”たっぷりの「二大スターの共演」というアピールポイントに対して、まるで新鮮味が感じられず、劇場公開時には完全に「面白くないだろう」とスルーしてしまった。
そんなわけで、レンタルショップの新作コーナーにパッケージが並び始めてから数週間経ってからようやく鑑賞。
いや、参ったね。大雑把で馬鹿馬鹿しい映画だが、きっぱりと面白かった。
自分の判別能力の未熟さを痛感するとともに、これだから映画は面白いと再確認させてもらった。
ストーリー展開に特筆するほどの驚きはない。概ね、予想されたストーリー、そして予想されたエンディングが映し出される。にも関わらず、「面白い」と断言出来ることこそが、良い映画である証明だと思う。
ピークは過ぎたと言わざるを得ないスター俳優を強引に共演させて、見慣れた派手なアクションと都合の良いストーリー展開でハッピーエンドを迎える程度の映画だとばかり思っていた。
しかし、実際に映し出されたのは、予想を遥かに超える痛快さと愉快さと愛すべき馬鹿馬鹿しさを携えた、長年ハリウッドの娯楽映画に親しんできた映画ファンにとって“ハッピー”なアクション映画だった。
中盤までは、もっと若くて生きの良いスターを起用した方がもっとアグレッシブな映画になるんじゃないかなどとも思った。
でも、ラストシーンの頃には、それぞれの哀愁も含めて、主人公の二人のことが大好きになっている。
終始追いつめられた状態で突き進む彼らの姿が、次第にトム・クルーズ、キャメロン・ディアスの俳優としての存在性に重なってきて、「もう後戻りは出来ない」という思いがやけに生々しく伝わってきた。
それは、“スター俳優”の力量であり、彼らの意地だったように思う。
ラストの顛末は、ベタなハッピーエンドのようにも見える。
けれど、強大な追っ手から逃れるように何も持たない二人が、ひたすらに南米の最南端に向かっていく姿には、刹那的な幸福を求める儚さも感じられた。
“粗”なんて数え上げれば切りがないけど、面白いんだからそんなものどうでもいいじゃないか。
と、ある意味、心から「安心」してみられる「安全」な映画だ。