3.《ネタバレ》 木暮実千代出演作を観るのは、自身二作品目。
この作品においても彼女は艶やかで美しかった。
仕草や話し方が素敵である。
特に、畳に座るときの姿勢が大好き。
ちょっとはかなげに斜めに座るあの感じ。
それに対してその旦那の醜さときたら・・・
この美と醜の対比が、否応なく観る者を興奮させる。(いや、自分だけかな?)
印象に残ったシーンをいくつか挙げてみる。
まずは冒頭の、雪夫人(木暮実千代)を慕う久我美子演ずる少女が、お屋敷のお風呂場に案内されるシーン。
だだっ広いタイルの間に、ポツンポツンと浴槽が地面に埋め込まれている独特なお風呂場。
別に入りたくなるような、いい雰囲気のお風呂場ではないのだが、それを映し出した映像は輝かしく、息をのむ程に美しかった。
久我美子演ずる少女が、ここで同性愛的な発言や仕草を見せる。
「ここで毎日、雪夫人がお風呂に入られているんですね・・・」
水面に目を遣りながら、こうつぶやくのだ。
眩しくて美しいこの映像の中でのこのセリフ。
やっぱり溝口健二の描く世界は美しい。
それともう一つの印象に残ったシーン。
それはラスト近くの、雪夫人が湖に姿を消してしまうまでのクライマックス・シーンである。
雪夫人は湖近くのホテルに姿を現し、屋外の椅子に腰掛ける。
そこにボーイが近寄り、声をかける。
ボーイはその後、建物の中に何かを取りに行き、それと共にカメラも建物の方へ動いていく。
ボーイ、そしてそれを追うカメラが再び屋外に戻った時には、雪夫人の姿は見えなくなっていた・・・
このシーンが雪夫人の最期を演出するシーンなのだが、とあるお方のお言葉を頂戴するならば、
“霧深い芦ノ湖の山のホテルに現れた雪がまたすぐに消えてしまうラストはぞっとするほど幻想的で美しい。”
といった感じで、まさしくその通りのラストであった。
戦後の華族制度廃止によって没落していく旧華族を描いている点についても、非常に興味を持って観ることができた。