37.《ネタバレ》 ちょっと古く、良い時代を感じさせるサスペンスホラー。
地味ではあるが落ち着いた良質サスペンスな雰囲気が深まる秋の鑑賞にぴったりの作品だ。
コッポラ監督が映画界にひっそりと巻き起こしたゴシックリバイバルに便乗する形で作られた映画の一つかもしれない。
狼男という古典的ホラーな題材が、マンハッタンの摩天楼を舞台にして描かれる。
昔から人々に恐れられてきた狼の持つ幻想性がしっかりと描かれている。
舞台となる出版社の吹き抜けの雰囲気が良い。
夕陽に包まれる泉を前にして座る恋人のシーンのどことなくメランコリックな美しさは心に残る。
動物霊の博士の家のオカルト映画な雰囲気など、
(子どものころから何度か見てると)そういった細々とした場面場面が心に沁みついてしまってる。
自分にとってはちょっと愛着のある映画だ。
パーティーで発作を起こした中年よりちょい上の男(ニコルソン演)を介抱し、やがて彼を愛する美女。
美熟女とまではいかないが、婚期をちょい逃したであろう年齢の美女は、
誰もが美しいと思う彼女の外面とは逆に誰にも理解されない面があった。そこが何か彼女はセクシーだ。
しかし彼女にそんな趣味があったなんて・・・ちょっと引いてしまう。
仕事上での「やられたらやり返す、倍返しだ!」といったような、いい気味のするシーンなどもあったりで楽しかった。
男の戦いや略奪が描かれるがそれは一元的ではなく、仕事から女まで多岐にわたるところが本能的でいい。
全体的に地味ではあるが漆黒な闇の描かれ方は上品でいて幻想的、オーソドックスでも賢く丁寧に作られてるのかなと思う。
ロマンス映画らしく見当外れな外野をよそに永遠の愛と哀しみに暮れるヒロイン。
魔女のように妖艶な印象を帯びる彼女の心の中には漆黒の森が生い茂り狼が駆けていた。
怪奇幻想にどっぷりと浸れる名場面。
この地味といわれる作品を絶賛する人は少ないだろうが、自分は幻想映画の良作だと感じる。