184.点数の分布でまさに賛否両論に分かれている点が、この映画の特徴ではないだろうか。
バートンらしいグロさや悪趣味に嫌悪感を示す人がいる一方で、それをバートンらしいユーモアと解する人がいる。
あの宇宙人にセンスを見出せる人、見出せない人。バカバカしさや悪乗りについていける人、いけない人。見る者のセンスによって、様々に意見が分かれるというのは実に面白い。
この映画を笑えないと思う人のセンスが悪いとは全く思わない(むしろ全面的に賞賛する人は少数と思う)が、個人的には、この映画に関するバートンのセンスは概ね素晴らしいと感じる。
この映画はセンスのよいお馬鹿映画という評価が下されているが、お馬鹿映画と一言で済ませられない位、実は凄い良い映画だと思う。
まず、豪華な役者陣の演技やセリフが非常に素晴らしい。
演技やセリフだけで、そのキャラクターの個性や内面がよく分かるように描かれている。これだけ多数のキャラクターが描かれていれば、キャラクターを混同したり、そんな奴いたっけ?という感じにもなりかねないが、どのキャラクターも活き活きと演じられているため、皆それぞれ存在感が充分あった。
速攻で死んでしまうジャックブラックにせよ、首だけになったピアースブロスナンにせよ、役になりきって演じられている。もちろん二役を演じたジャックニコルソンも。
個人的には、パムグリアーと「大統領を早く逃がせ」という二人の子ども達がなかなかのお気にいり。
さらに気に入ったのは、火星人が死んだ後に、黙々と火星人の死体や戦いの後始末を描いたシーンだ。
このシーンには、戦いの虚しさや悲惨さをバートンは一応込めたのではないだろうか。また、ボクサーのチャンプには家族の愛を感じることもできるし、ピアースとサラの二人の関係にはどんな姿や形になろうとも消えることのない人間の普遍的な愛情も描いていると思われる。
馬鹿馬鹿しさだけではなく、ちゃんと描くべきところもしっかりと描いていると感じられる点が評価したいところである。
この映画を完全に理解するために欲しかった知識としては、①トムジョーンズって一体誰よ?彼と「よくあることサ」に対する評価・扱いは?②火星人を死んだ理由のあの歌に対してアメリカ人が抱くイメージを知りたいところ。
①と②をなんで選んだのか、バートンのセンスを知るためにもこのあたりの知識が欲しいところである。