10.《ネタバレ》 2008年現在時点での、女優「蒼井優」の集大成だと思う。傑作。
“良い映画”として賞賛すべき要素は多々あるが、何を置いても語るべきは、「蒼井優」意外にない。
短大卒、就職失敗、理不尽な事件にまで巻き込まれ、人生に所在が無い21歳の主人公鈴子は、盲目的に100万円を貯めながら、見ず知らずの土地を転々とする。
何があっても苦虫を潰したような愛想笑いしか出来ない主人公のこの一風変わったロードムービーには、ビターに、切なく、そしてふいに温かい風が吹き込む。
「自分」をまったく知らない人達との触れ合いの中で、本当に少しずつ自分自身を見つめ直し、成長していく主人公の姿は、とても自然体で時に「哀愁」すら感じさせる。
どこまでもドライに乾ききった女性像を表現しているにも関わらず、どこまでも魅力的に映し出される蒼井優は、「ハマり役」という言葉では足らず、主人公の「佐藤鈴子」そのものだ。
「何やってんだろう」「くるわけないか」、端々でつぶやくさりげない台詞の一言一言に、主人公の感情がしっかりとこもっていて、印象強く残り続ける。
監督・脚本を手がけた女流監督タナダユキの力量もまた間違いないものだと思う。
見ず知らずの地を巡っていく主人公は、決して幸せには至らない。
でも、見ている者はほんのりとぬくもりを感じ、勇気づけられる。
ハッピーエンドとも、バッドエンドとも言い難い「微妙」なラストシーンで、これほどまで解放的な気分をもたらすこの映画のオリジナリティが、スバラシイ。