11.《ネタバレ》 映画冒頭に大和の最期を描き、そこから時代を遡って大和建造に関わる物語を描く、という構成。本来はこの作品の物語の「外」にある大和轟沈のエピソードを、冒頭で我々に見せるのは、ひとつにはスペクタクルシーンの提供、ハッキリ言うとサービスなんでしょうけれど、この構成が成功したと言えるかどうか。そりゃま、確かに我々もその迫力を、ハッキリ言うと楽しむ訳ですが。
ただ、将来訪れる日本の敗北と、この大和の最期とは、物語の上で重ねられている訳だから、それを見せるシーンとしては、あまりに駆け足で、バランスが悪いような気もします。その最大の特徴である「巨大さ」が充分描かれる前に、どこか模型のような機械的な動きで横転し、爆発する大和。
ヤマトつながりで言うと、10年近く前の大失敗(?)を少し思い出してしまうのですが・・・。
と、それはさておき、時代が遡って本編の物語が始まると、もう菅田将暉の独壇場。エキセントリックな言動とオーバーアクション気味の演技で、物語をグイグイ引っ張ります。物事を何でも「美しい!」とか「美しくない!」とか評している姿は、仮面ライダーWのフィリップ役でしきりに「興味深い!」とか言ってたのを彷彿とさせたり。
脇を固めるベテラン勢は控えめの演技で、橋爪功は多少オーバーでコミカルに敵役を演じてますが、舘ひろしの山本五十六も一歩引いた感じ(それでも人柄を表すために、しばしば彼が披露したという逆立ちエピソードなどは盛り込まれてますが)。あくまで熱い菅田将暉と、おそらく同じくらいの熱さを内に秘めた柄本佑を中心に据えて、若い役者さんに存分に表現してもらう、この点は間違いなく本作の魅力となってます。
熱い言動の一方で、図面にじっと見入る菅田将暉の視線。彼の視線、彼の横顔が我々を惹きつけますが、一方、映画の終盤で、敵役である田中泯が、君と自分は同種の人間だ、などといって横顔を見せると、確かにそこには同種の横顔、同種の視線がある。
静かな、しかし圧倒的な説得力を持つクライマックスだと思います。たとえ冒頭シーンが無かったとしても。