5.《ネタバレ》 これは隠れた傑作でした。
テンポも良いし展開もぐるぐる切り替わる密度。当時これほどの傑作が評価されなかったのが不思議でならない。
これだけの完成度、しかも木暮実千代と久我美子ですよ?
最高に私好みの作品じゃないですか・・・(「新・平家物語」のおっぱいもたまりませ(ry)
確かに溝口作品にしては斬新とも言える内容ではある。ただ、この作品から感じられる官能的で優美さのある見事さ。
木暮実千代が色っぽい。最高に。
直接的な描写がなくともここまで艶を感じさせる演技、そして溝口の演出。
旧華族制度の崩壊、二人の男の間で揺れる煮え切らない女心・・・全てに絶望したラスト・・・後の「山椒大夫」のようなキレイな映像でした。
風呂場のお湯と白いタイルのように希望に満ちていた彼女は、度重なる不幸を目の辺りにしていく。彼女は深い水の底での安らぎを選んだのかも知れません。
まるで兄の身を案じて湖に身を投げた「山椒大夫」のあの妹のように・・・ただ後の彼女には微かな希望がありました。「私が死ねば兄は楽になる」と。そんな希望すら雪には無かった。
うら若き乙女を死に追いやる溝口の残酷さ、ただそこには若さゆえの儚さ、美しさがある。