64.《ネタバレ》 94年のフランス映画「愛するための第9章」を95年にアメリカでリメイクしたという、風変わりな一本。
残念ながらフランス版は未見の為、詳しい比較などは出来ないのですが……
これ単品で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。
結婚前の優雅な「恋人時代」が冒頭に描かれている為、そんな幸せな日々を奪われてしまった男として、妊娠に戸惑う主人公にも自然と感情移入出来ちゃうんですよね。
「赤ん坊の健康の為、飼い猫は捨てた方が良い」「二人乗りのポルシェは、買い替えた方が良い」と言われてしまう場面などは、本当に主人公が可哀想になったし「父親になるのを嫌がる男」として、きちんと説得力があったと思います。
それと、本作は豪華なキャストが揃っている点も特長なのですが、中でもやはり、ロビン・ウィリアムスの存在感は凄かったですね。
もう画面に彼が出てきた途端「ヒュー・グランド主演のラブコメ」が「ロビン・ウィリアムスの映画」に変わっちゃうくらいのパワーがある。
本作の場合、主演のヒューも魅力たっぷりな俳優さんである為、ギリギリでバランスが取れていたけど……
もっと地味で華の無い主演俳優さんだったら、完全にロビン・ウィリアムスに圧倒されて、歪な映画になっていた気がしますね。
そのくらい、彼の存在は光っていたと思います。
子供を産むデメリットについて、ヒロインが色々と語った後「それでも欲しいの」「私の中で、命が生きてるのを感じるのよ」と訴える場面なんかも、女の強さというより、母の強さが感じられて、印象深い。
母親は生まれてくる子が「自分の子」だって分かるけど、父親にとってはそうじゃないという普遍的なテーマについても、さらりと触れていたりして、この辺も良かったですね。
我が子の為なら、たとえシングルマザーになっても生きていくと、早々に決意を固めたヒロインに対し、中々煮え切らない主人公の姿に、リアリティを与えていたんじゃないかと。
主人公が小児精神科医という設定に、あまり必然性を感じない事。
途中何度か出てくる「蟷螂」の姿が怖過ぎる事。
車に関しては「ファミリーカーに買い替えた」とあるけど、飼い猫はどうなったのか明かされず仕舞いな事など、欠点というか、気になる点も多いんだけど……
まぁ、決定的な短所とまでは思えなかったです。
それと、自分は男性である為、どうしてもこの主人公は優し過ぎるというか
(妻に対し、妥協し過ぎ。自らを犠牲にし過ぎ)
って思えたりもしたんですが、それも観終わる頃には、あまり気にならなくなっていましたね。
女性の「産む苦しむ」に比べたら、そのくらい軽いもんだろって、クライマックスの出産シーンで諭されたような感じです。
産まれたばかりの赤ん坊を抱きながら「僕らは家族だ」と言ってキスする場面も、二人が「恋人」から「夫婦」になった事を感じられて、凄く良かったですね。
「一人の男が、父親になる物語」として、しっかり楽しませて頂きました。