61.《ネタバレ》 学生の頃に夜中なんとなくテレビを見ていたら本作がやっていました。
フランキー堺さんは名前が格好悪かったり、彼の四角い顔が生理的にダメだったのでかなり嫌いな俳優でした。
見終わった後にテレビの前で「ヤバい、これマジでヤバい…」と声を出して1人で呟いた事を覚えています。
映画好きになら解って貰えると信じて書きますと、とんでも無い作品を見終わった時に、リミッターを超えた満足度から来る高揚感で脳みそがゾワゾワして体全体が吹っ飛ばされそうになって叫びたくなるアノ感覚です。(私だけだったらかなり恥ずかしいです…)
その頃からおっさんの様に落語と時代劇が大好きだった自分には、ど真ん中でした。
生理的に受け付けない役者さんの作品を見て180度見方が変わって最高評価になった人は私の中で3人いますが、フランキー堺さんはその中の1人です。
侍、女郎、客、使用人、楼主、居残り等のそれぞれの欲や思惑が乱れ舞う品川遊郭相模屋で、立川談志さんが言っていた様に人間の業を肯定しながら話は軽妙に進みます。
その中でも、堺さんがとんでもなくカッコ良いです。
台詞回しからは粋で破天荒な人間を感じ、所作は軽快で無駄は無くそれでいて不思議と品や優雅さの様なものが漂うシーンもあります。
相模屋の1・2階を動き回る姿はまさにバレエのプリンシパルです。
死に向き合いつつ抗い、全力かつ狡猾に生きているメメント・モリ佐平次は相模屋では無双です。
他の連中とでは素養と覚悟が違います。
堺さん自身もまた然りです。
左幸子さんや南田洋子さん等も好演していますが、堺さんと周りの役者さんとではレベルというか正直演じている次元が違う様に感じました。
バカみたいですが毎回見る度に、堺さんが前に見た時と違うことを言ったり、違う演技をするのではないかと本気で思ってしまう程、作中では活き活きと自由で自然に見えます。
ラストシーンは自分の意を汲んで貰えなかった川島監督が会社に対しての当て付けでわざと質を落したのではないかと思う程、テンポも編集もよく有りません。
加えて、作中にもカット割りや音声、編集の稚拙な所は有るのでマイナス3~4点になると思いますが余裕で10点です。
それらのマイナス要因は、この評価が揺らぐ様な事では有りません。