210.《ネタバレ》 黒澤明はアクション時代劇派な俺にとって、本作はあまり好きじゃない。
確かに良い映画ではあると思うけど、こんな暗く息苦しい映画が黒澤の傑作として語られるのは気がひける。ヒューマンドラマ押しでも「赤ひげ」は好きだけどさ。
感動できるだあ?オイオイ、何でこんな変な映画で泣かなきゃならないんだ。
いやね「何を成し遂げ、何を成せなかった」かそれを突き詰めて行く様は凄いよ。
公務員の矛盾に満ちたシステムをあんな風に描いたのはビックリ。
たらい回しと無限ループ。すげえ解りやすい。
いきなり主人公が「アレ」になって「えっ?」ってなったけど、そこから少しずつ生き様を語っていく流れは良かった。良かったけど、主人公の執念に満ちた感じが強すぎる。
その執念が主人公を突き動かしてもいたし、最後まで目的を遂げられたんだろうけど「自然な執念」じゃないんだ。
まるで誰かの復讐のために異常に自己暗示をかけてるみたいで、辛く感じる以前に違和感を拭えなかった。
住民に感情移入したワケでもなし、信用していた息子にも半ば捨てられた。
自分の人生は何だったのだろう、こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなっちまったんだろう。病が明らかになり“死ぬと解った”から主人公は答えを探す事をはじめる。
「公園を作れる男になりたい」か、「おまえは公園作って死ぬような人生送るの?」か。
だが男は「どうせ死ぬんだ、公園でも何でも作ってやるぜえ!」
ヤクザもそんな気味の悪い男を見て「何だコイツ」状態。
男は公園を作った“だけ”。それ“だけ”のために死ぬ事を決めた。
悪臭の沼地を無くして住民に感謝されたいだの、公務員本来の仕事をして他の仕事仲間を刺激したかっただの、息子たちを見返してやりたかっただのそんな考えは微塵もなかった。
男は“何も考えず我武者羅に働く”喜びを思い出しただけだと思う。誰のためでもない、自分のためだ。
それが巡り巡って誰かのために“自然と”なるのだろう。
だから「誰かのために働いても何の感謝もされねえじゃん」じゃなくて、「自分のためにひたすらやってたら何故か感謝された。よく知らんが嬉しい」という事が、本当の喜びなんだぜという事を黒澤明は言いたかったんだろう。だとしたらすげえ回りくどいなソレ。