15.これは「君の名は。」のような単なるブームとか現象とかいうものではなく、「千と千尋」のようなジブリ全盛期のブランド的価値とかいうものでもない。
シンプルに”内容が実に良い”。
キメツはあらゆる人間を共感させる。
映画を見る前に見たアニメ26話で気づいただけでも、
◆職場でパワハラに悩む会社員や派遣社員やフリーター
◆DVやモラハラで苦しむ主婦
◆親に虐げられたり、離れ離れになってしまった子ども、
◆自分の才能を信じて夢に向かいながらも葛藤するアーティストの卵
などなど、あらゆる世代を共感させるキャラとストーリーが詰め込まれている。
首や血が飛ぶ表現が批判されがちだが、実はそれほど狂暴な存在として描かれている鬼が、人間時代はとんでもなく悲しくせつないエピソードを持っており、そのコントラストを強くするためにあると考える。
頭ごなしに、「残酷描写ノドコガイインデスカ」と否定し退けるのは間違っていますよ。
また善悪両方の世界が厳格な”ランクづけ社会”になっていて、学生も社会人も感情移入しやすい。
そしてこの映画では、本来の主人公タンジロウではなく、タンジロウの上司(鬼退治会社の幹部)の、レンゴクさんという熱い男が主人公になっている。
そして映画でもアニメの各話同様、”過去エピソード”が涙を誘う。
やっぱり何歳になっても、男はお母さんが好きだよねぇ…。
アニメ版ほどえぐい流血もないし、”強いものに生まれた者は弱いものを守るもの”っていうシンプルで分かりやすいメッセージで、子供にも見せてあげてOKだと感じる。
(『アメリカンスナイパー』に「人間は3種類。狼と羊と番犬だ」というセリフがあるけれど、レンゴクさんはまさに番犬。)
ところで。
世間がずっと前からキメツキメツと騒いでいたころ、40代の私は「また、ワンピースとかナルトとかそういうジャンプ系の一過性のブームでしょ笑」と、見向きもしなかった。
アニオタの娘(JK)も、グロい表現(首飛ぶ、血しぶき上がる)があるらしいとのことで、敬遠していた。
しかし、そんな娘も友達に原作を貸されて読んだらあっという間にハマったらしく、娘の影響で私もアニメを見たら、食わず嫌いだった自分を恥じた。
敵である鬼も、もともとは人間。
いわゆる血液感染で鬼になってしまうのだ。
(鬼にさせちゃうのは、鬼のトップであるキブツジ ムザン)
なので、どんなにひどい鬼も、その過去エピソードが明かされると「あぁ…そうだったんだ…」と涙を誘う。
実はここがキメツの醍醐味だ。
戦うだけ戦って、敵が死んだ後で、敵のせつない過去を見せる手法は、スターウォーズ形式(EP4~6からの、1~3)と名付けたい。
(ただし、今回の映画ではアカザの過去エピソードはおあずけ。
私は劇場版を見た後、原作で彼の過去を知ったので、「そうか…彼がドーンって大地を踏むとああなるのは、そういう理由だったのか…」とかいくつも過去とリンクする彼の容姿や技に気づかされ、「じゃぁもう一度見てそれを確認しなくちゃ…」と思っているところです。
ということで、今回はアカザではなくレンゴクさんの過去エピソードにて泣いてください。)
ちなみにアニメや原作を見なくても、最低限これだけおさえておいて、ネットでビジュアルだけ確認しておけば、映画を見てもついていけると思う。↓
●メインキャラ
・タンジロウ(努力家。鬼になった妹を人間に戻すために、鬼退治の組織”鬼殺隊”に入った新入社員。)
・ゼンイツ(極度の臆病者。失神してから夢遊病者みたいに戦い出す。タンジロウの同期。)
・イノスケ(好戦的。承認欲求強め。イノシシに育てられたので、イノシシの被り物をしているタンジロウの同期。)
●サブキャラ
・ねずこ(タンジロウの妹。鬼化したが特別変異で人を食わずにタンジロウと共に鬼の超人的パワーで鬼退治を手伝う。)
・レンゴク(鬼退治の組織の9人いる幹部”柱”の1人でタンジロウの上司。今回の映画の主役。)
●敵キャラ
・アカザ(鬼軍団の12人いる幹部”十二鬼月(じゅうにきづき)”の3位ランクの鬼。)
・エンム(”十二鬼月”の下位ランクだが、ムザンに気に入られパワーアップする血を与えられての今回が初参戦。柱とタンジロウを殺して、上位ランクに昇進するのが夢。)
※鬼は太陽を浴びると死んじゃうので、ねずこは日中は箱に入れられてタンジロウが背負って移動している。