210.《ネタバレ》 ブライアン・デ・パルマという監督を知っているか?
いや、今日は久しぶりに本作を観た。
人は生きてると、追いつめられる事がある…
そんな時こそ、これを観て欲しいと思う映画だ。
仕事でもそうなんだ。
――「こんなはずじゃなかった…」
――「あの時、ああなったから…」
――「アイツが居なきゃ…」
時間が経過すりゃ反省する事もあるが、こんな思いになる事があるだろう。
俺も、多分…過去はそうだったと思う。
けど、早いうちに、俺は最悪と共に「その考え」を変える事が出来た。
それは、過去…癌に掛かった時だ。
癌に掛かると逃げ場のないエリアに追い込まれる。
散々、癌の時にも上記の事を散々考えた。
けど、どうにもならず…頭に描かれたのは信長公の言葉。
――是非に及ばず。
要は、仕方ない…そう考える事だ。
そりゃ、文句や言い訳もあった…無限に。
けど、考えて考えて考えて…何度も何度も思考は辿るが、結局のところ自分なのだ。
結局は、人は変えられないが自分は変えられる。
この思いを含めて更に考えてみる。
世の中には自分しか居ない訳じゃない。
そして、天候が変われば晴れや雨にもなるのが道理。
素晴らしい世界がたくさんある代わりに、想うように進まない事が殆どと知るべきだ。
けど、諦めるって意味じゃなく、どこを基本に置くか?の問題。
そう――是非に及ばず、だ。
人生は、考えていた基本形で物事は進まず…色んな事件が付加したり、様々な人間が絡んでくる。
その突発的な出来事すらも絡めて、物事を進めていく…それが人生であり”道”なのだ、と思う…。
さて、カリートの道。
尊敬する監督…ブライアン・デ・パルマの逸品だ。
監督の作品を辿れば…ヒッチコックに導かれたような数々の名作を知り、ジャンル問わず時代を駈け廻っていたと知る。
いや、様々な娯楽映画を創りながらも中でも、俺は「スカーフェイス」や「アンタッチャブル」が大好きで堪らない。
険しく切ない…男の道。
そして…時に現れる怨敵と困難の世界。
回避すべき世界を壮絶に観せて男が葛藤する…それが名将がデ・パルマ監督の作品だ。
デ・パルマの世界に触れるだけで俺は震える。
言わば、アレだ。
人生経験よりも時には得るものが多い。
俺にとって、だけど…そんな名画を創る監督だ。
さて、簡潔にカリート・ブリガンテの人生を辿りたい。
元麻薬王のカリートは友人弁護士の力で出所し、自力での更生を誓う。
正しく生きる為、周囲の誘いも断り…悪しき道に通ずる関係を断ち切ろうとした。
けど、現れる困難。
殺しの現場、悪意への誘い…その度にカリートは思う。
「この困難は、先に進む為に仕方ないことなんだ…」と。
だが、人としての義理、己の信念を果たそうとすれば、周囲や状況はそれを許さない。
一体、彼の進む道は…どこに向かうのか。
そして、彼の進みたかった道は何なのか?
ただ、一生懸命に道を歩きたかった…カリート。
――更生後の素晴らしい世界。
――愛する者と一緒に居る世界。
人を裏切らずに暮らそうとする彼が…疑念で敵に追われる様が…観ていて、ただ苦しかった。
きっと「これは俺の道じゃない…」と思いながら藻掻くカリート。
逃走せずに、己の道を探す彼…そこが「カリートの道」なのだろう。
想えば、カリートの道も、スカーフェイスもそんな映画だった。
例えようのない困難、人による鬩ぎ合の中で巻き込まれてゆく…そんな不条理の嵐…その嵐に立ち向かって生きてゆく。
けど、一方のアンタッチャブルはどうか?
財務官のエリオット・ネスは出向先の警察に散々裏切られ苦汁を飲む。
けど、そんな中でも彼は決心する。
己のプライドを捨てて、敢えて警官の中に飛び込んだ。
そして、マローン、マローン、そしてストーンら仲間を得て、命を賭して…暗黒街の王アル・カポネを追い詰めたのだ。
この突発的な出来事も人生だ。
受け入れる。
困難も祝福も、すべてすべて受け入れる。
そして時に振り返り、こうつぶやくのだ。
これが俺の道だ、と。
そう――是非に及ばず。
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