1.1930年代の邦画としては素晴らしい出来。
何より、セリフの一つ一つに含蓄があるのが良い。
例えば、「現代において幸せでいるためには、他人の不幸を見ないようにしなければならない。」なんて、実に的を射ている。
あまりに痛烈すぎて、こんなことに同意してしまうと、周りから冷たいと思われるかもしれないが、生きていく為には必要な割り切りでもあり、偽善者ぶって否定したところでそれは嘘になる。
自分がいかに幸せな状態にあったとしても、他の人間は幸せとは限らないわけで、全員が全員幸せなんことは実社会であり得ないのだ。
それを見事に言い表したセリフだが、こういった歯に衣着せぬ痛烈な風刺的セリフが、本作では沢山飛び交うのである。
1時間程度の短い作品であるが、処世術の様な、実にためになる印象的なセリフがそこかしこにあり、何度も観れば人生勉強になるかもしれない。
そういう意味で、本作は実用的な作品であり、また、純愛とは何かをテーマにした恋愛劇でもある。
ところで、助監督に本多猪四郎や黒澤明の名があるのが興味深い。