1.冒頭からそれとわかる伊福部昭の重厚な音楽が、娼婦の更生という題材にあわせさらに重々しい旋律で響く。一方で軽快なダンス音楽の挿入曲が、三浦光子と北林谷栄の取っ組み合いの場面などで対位的な用い方もされているのはやはり黒澤明『野良犬』(1949)の影響もあるのだろうか。ドラマの舞台は閉塞的な更生施設にほぼ限定されるが、ダンスやバレーボールや喧嘩などの動的なアクションや、ダンスのステップからミシンの足踏みへといったつなぎのテクニックが随所に活かされ、見所に事欠かない。わけても、視力を失っていく三浦光子が病室に横臥する場面のローキー画面は、玉井正夫の真骨頂といった感じでやはり素晴らしい。机上のランプの灯りを受け浮かび上がる彼女の顔に幻想的な川面の光と少女時代の姿がオーヴァーラップし、彼女自身の再生を思わせるように赤子の産声が響いてくる。夜明けの丘に立つ女性と木立のシルエット。この厳かなロングショットも良い。