1.撮影は鈴木達夫。
白と黒のシャープなコントラストを基調に
ドキュメンタリーと観念的ドラマがせめぎ合う画面は、
季節や気温、湿度、人物の体温の感触まで余すところなく掬い取っており、
素晴らしい。
少年が白樺林で蝶を追うシーンの浮遊感(北海道篇)や、
駅ホームから地上出口までの雑踏を追うカメラ(大阪篇)。
反核集会の人混みの合間を縫っての移動(広島篇)。
あるいは、喫茶店2階の乱闘から階下へ、
そして雨に濡れた路上での銃撃までを延々と追うゲリラ撮影的長回し(東京篇)などの
動的なハンドカメラが時に詩的で、時に生々しく、安定と不安定の按配も絶品である。
そうしたダイナミックな動的ショットと端正な静的ショット、
あるいは緊密なクロースアップと望遠ショットの対照が利いている。
ヘッドライトを原爆の光に模した観念的なショットが登場するかと思えば、
様々なニュース映像やインタビュー音声までが奔放に入り乱れる雑然ぶりは
後の『原子力戦争』のゲリラ撮影へと連なっていく大胆さだ。
とくに映画の後半、香港篇が入って来る辺りで映画が破綻気味に変調しかかるが、
松村禎三の主旋律と加賀まり子の美しい佇まいが
映画に一貫したトーンを保たせている。