4.作り手の良心を疑いはせぬものの、いかにも映画賞が絶賛しそうな優等生的「旬のテーマ」を取り上げ、通俗的な脚本に落とし込んだソツの無さに素直な共感を阻まれるのも事実。
トラックを追って走るアフリカ難民キャンプの子供たちのスローモーションなどには、作り手のスタンスと彼女らが抱く紋切型のイメージが露骨に出ている。
明快すぎる極悪キャラクターの造型や、爆弾のカウントダウンとジョギング中の母娘の劇的なカットバックによる通俗的なサスペンス演出を配置しつつ、
カタルシスを程よく担保した無難な落としどころへ収める語り口。
その模範的な図式化にどこか作り手の打算を感じてしまうというのは穿ち過ぎか。
この手の主題に関しては、理詰めの感覚が問題提起の強度を弱めてしまう気がする。
それでも、変奏される風のモチーフと二人の少年の表情はとてもいい。
廃ビル屋上の危うい感覚も、少年の心象に通じて胸をざわつかせる。